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317話 後始末

 グルドは倒れた。

 完全に気絶している様子で、立ち上がる気配はゼロだ。


「……ふぅ」


 まさか、魔剣を持っているとは思わなかったから、少し焦った。


 でも、ただ持っているだけで、グルドの剣の腕は大したことはない。

 だから、僕一人でも対処することができた。


 以前は、ソフィアと一緒でないとダメだったけど……

 少しは成長できているのかな?


「大丈夫ですか?」


 アルベルトのところへ駆け寄り、手を差し伸べた。


 グルドはしばらく目を覚まさないと思うから、そのままで問題ないと思う。

 それよりもアルベルトが怪我をしていないか気になる。


「ああ……うん、大丈夫だよ」


 僕の手を取り、アルベルトが立ち上がる。


「打撲くらいはあるだろうけど、骨は折れていないと思う」

「よかった」

「それにしても……」


 アルベルトは、倒れているグルドを見る。


「父があんな力を持っていたことも驚きなのだけど、まさか、一人で倒してしまうなんて……君はすごい剣士なのだね」

「い、いえ。そんな……わりと偶然のようなところが」

「だとしても、それも君の実力だ。君を尊敬するよ」

「あ、ありがとうございます」


 アルベルトは恋のライバル。

 そんなことを言われても、本当なら複雑な気持ちになるかもしれないのに……


 でも、不思議とそんなことはない。

 素直に嬉しいと思うことができた。


「ところで、父が持っていた剣は、なにか特別なものなのかな?」

「えっと……詳細を説明すると長くなるので今は省きますけど、特別なものです。単純にすごい剣っていうだけじゃなくて、持ち主の心をおかしくしてしまいます」

「そうか」

「もしかしたら、圧政を敷いていたのも……」

「いや。だとしても、それは父の責任だ。今更、それを覆すことはできない」


 アルベルトは厳しい顔をして、折れた魔剣を手に取る。


「折れているから、おかしくする力はないと考えていいのかな?」

「大丈夫だと思います」

「よし。ならば、私はこれを持ち、父を倒したことを喧伝してくる。そうすれば暴動も収まるだろう。すぐに応援を回すから、それまでここを頼んでもいいだろうか?」

「わかりました、任せてください」

「ありがとう」


 アルベルトは小さな笑みを見せると、折れた魔剣を手に、街の中心部へ駆けていった。


 その笑みは、どこか寂しそうで、悲しそうで……

 グルドのことを考えていたのかな……なんて思うのだった。




――――――――――




 アルベルトの狙いは正しく、暴動を無事に収めることができた。


 暴動によって大きな被害が出たものの……

 しかし、死人などは出ておらず、最悪の状況は免れることができた。


 アルベルトは、父であるグルドの罪を告白……そして断罪。

 新たに領主となることを宣言した。


 レノグレイドの人々は圧政に苦しみ、新しいヒーローを求めていたのだろう。

 アルベルトは好意的に受け止められた。


 この先、ずっと好意的でいてくれるかどうか、それはわからないのだけど……

 アルベルトのがんばり次第だと思う。

 うまく街を立て直せるかどうかも彼にかかっている。


 これから大変だと思う。

 暴君は追放されたけど、しかし、グルドによって街はボロボロになった。

 立て直すことは難しく、一から作り直した方が、ある意味で早いかもしれない。

 それほどまでに大きな傷を抱えているらしい。


 でも……


 たぶん、うまくやっていけると思う。

 この街の人は強くてたくましい。

 そして、そんな彼らの新しいリーダーは聡明だ。

 アルベルトなら、きっとうまく導いてくれると思う。


 そして……

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 貴方の作品の主人公は共通してるのは「くじけぬ心」を持ってる所ですかね。 やはり、クロスオーバー作品みたく、交わっておきたいなあ。 そこは我々の脳内補完で補う形になりそうですけどね!
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