表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
317/520

316話 魔を断つ剣

 流星の剣。

 その名を体現するかのように、刃がわずかに輝きを帯びていた。


 なんだろう?

 こんなこと、今まで一度も起きたことがないのに……


「貴様、なにをした!?」


 グルドが激高して襲いかかってきた。

 今までよりも激しく、苛烈な攻撃を繰り出してくる。


 でも……


 不思議だ。

 彼の攻撃を全て見切ることができた。


 この攻撃は当たらない。

 この攻撃は、横に一歩、動けばいい。

 そんな答えが次々に思い浮かんでくる。


 もしかして、剣が力を貸してくれているのかな?

 リコリスの友達の形見。

 それと、アイシャが力を込めて、父さんが魂を込めて打ってくれた剣。

 だから、そういう奇跡のようなこともあるのかもしれない。


「僕は、あなたに負けない」


 改めて流星の剣を構えた。


「力だけが正しいなんて、そんな間違ったことを言える人を……そんな寂しくて悲しいことを言う人になんて、負けてなんかやらない!」

「吠えたな、小僧っ!!!」


 グルドは怯むことなく、むしろ、より苛烈な攻撃を繰り出してきた。

 斬るというよりは叩き潰すという感じで、魔剣を強く振る。


 対する僕は、あくまでも冷静に対応する。

 真正面からぶつかることは避けて、必要最小限の動きで対処。

 攻撃を受け流して、危険を排除する。


 何度も何度も剣が交わるのだけど……

 でも、グルドの剣が僕に届くことはない。


「おのれおのれおのれぇえええええっ!!!」


 グルドは泡を吐くような勢いで激高した。


「この儂にできないことはない、あってはならないのだ! 力を手に入れた。絶対の力を手に入れた以上、全てを従えることができるはずなのだ。それなのに、このようなことは……!!!」

「それは勘違いですよ」


 力で他者を従えることはできる。


 事実、僕も昔は奴隷だった。

 シグルド達にいいようにされてきた。


 でも……


 心は自由にできない。

 体を縛ることはできても、その心は好きにできないんだ。


「力だけじゃダメなんだ」


 前に出た。

 今度はこちらから攻撃を叩き込む。


「ぐっ……!?」

「力だけじゃなくて、心もないとダメなんだ。ましてや、他者を従わせようとするなんて……そんなことをしなくても、きちんとした道を歩いていたのなら、自然とついてきてくれるのに」

「簡単に言うな! なんの苦労も知らない若造が!?」

「あなたこそ簡単に諦めるな! 努力を投げ出したくせに!」


 さらに前に出た。


 前へ。

 前へ。

 前へ。


 流星の剣を振り続けて、ひたすらに攻撃を重ねていく。

 いつしかグルドは防戦一方になる。


「ばかなっ!? この儂が……レノグレイドの領主である、この儂が!?」

「あなたの力は……ハリボテだ」

「っ!?」


 一閃。


 ビシリ、という鈍い音が響いて……

 魔剣が半ばから折れた。


「……あ……」


 グルドがぐらりとよろめいて……

 その隙を逃すことなく、脇腹に剣の刃を叩き込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ