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313話 闇に落ちた領主

 歳は五十前後だろうか?


 熊のようにがっしりとした体。

 長く伸びた髭は丁寧に整えられている。


 豪胆という言葉がぴったりと似合う外見なのだけど、でも、顔は綺麗だ。

 鼻は高く、顔の輪郭は柔らか。

 その顔には見覚えがあって、アルベルトとよく似ている。


 ということは、もしかして……


「……父上……」


 アルベルトが苦い表情でつぶやいた。


 やっぱり、この人がアルベルトの父親で……

 レノグレイドの領主、グルド・ヒルディスらしい。


「愚息もいるようだな。そこでなにをしている?」

「見てわかりませんか?」

「念のため、確認をしただけだ。愚かとはいえ、一応、儂の血を引いた息子だからな。弁明の機会くらいは与えてやろうと思ったまでのこと」

「弁明するようなことはなにもありません」

「そうか。ならば……」


 ぶわっと殺気が膨れ上がる。


「死ね」


 グルドの体が何倍にも大きくなったかのような錯覚。

 そんなものを抱くほどの強大なプレッシャーを放ちつつ、突撃してきた。


 速い。

 そして、重い。

 立ちはだかるもの、全てをなぎ倒すかのような突撃だ。


 多少の交渉はできると思っていたらしく、突然のことに、アルベルトは棒立ちだ。

 僕は急いで彼の前に立ち、流星の剣を構える。


「ぐっ!」


 ギィンッ!!!


 刃が交差した。


 なんとか受け止めることができたけど……重い。

 まるで鉄塊を叩きつけられたかのようだ。


 これは、魔剣の力だけじゃない。

 純粋にグルドの戦闘力が高いのだろう。


「なっ……!?」


 突然、始まった戦闘にアルベルトは驚いている。

 でも、驚いているヒマはない。


「剣を!」

「いや、しかし……」

「話し合いはできません。わかるでしょう!?」

「……そうだな、すまない」


 アルベルトは気持ちを切り替えた様子で、横からグルドに斬りかかる。

 速い剣筋。

 そして、正確な攻撃。


 ……だからこそ読みやすい。


「甘いな」

「がっ!?」


 グルドは僕と剣を交わしたまま、蹴りを放つ。

 見事なカウンターとなり、アルベルトが吹き飛んだ。


「くっ!」


 助けに行きたいけど、でも、グルドと剣を交わしたままだ。

 これ以上、他所に注意をやれば、一気にやられてしまう。


「その剣は……」

「うん?」

「その剣は、どこで手に入れたんですか?」

「ほう。その目、その口調。魔剣のことを知っているな」

「それは、とても危ない武器です。手にしたら心がおかしくなってしまう! 早く手放して……」

「承知の上だ」


 グルドはニヤリと笑い、魔剣を握る手に力を込める。


「わかっていて……!?」

「そして……すでに、手遅れでもある」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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