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307話 私のやるべきことを

「どうやら、思っていたよりも紳士な方みたいですね」


 フェイトとアルベルトを見送り、ソフィアはぽつりと呟いた。


 自分が前線に立たないと言えば、アルベルトは難色を示すだろう。

 フェイトではなくて、自分に協力してほしいと言うだろう。


 そんな予想をしていたソフィアだけど……

 それは外れることに。

 アルベルトは必要以上にソフィアを求めることはなくて、わりとスムーズにフェイトを受け入れた。


 フェイトを信じることにした、というだけではなくて……

 戦争のような状況なので、女性であるソフィアを前線に立たせたくない、という想いが働いたのだろう。


「気を使っていただけるのは、嬉しいですけどね。でも」


 やれやれ、とソフィアはため息をこぼす。


 女性として扱ってもらい、優しくしてくれることは素直に嬉しい。

 でも、それでは不満なのだ。

 男女関係なく、好きな人の力になりたい。

 隣に立ちたい、と思う。


 フェイトは無自覚にそれを理解しているのか、ソフィアを必要以上に縛ることはしない。

 アイシャ達を守る役目も危険だけど、ソフィアなら大丈夫と信じて任せていた。


 そうやって、互いに互いを支え合う。

 それが、ソフィアが求める理想的な関係だ。


「だから、私はフェイトが大好きなのですよ」




――――――――――




 ソフィアは風のように……

 いや。

 それ以上の速度で駆けて、アルベルトが所有するセーフハウスの一つに向かう。


 彼のような立場になると、街に複数の避難場所を持つ。

 そのうちの一つにアイシャ達がいる。


 ソフィアは、大事な家族達の無事を確かめようとして……


「あーもうっ、うっとうしいわね!」


 セーフハウスに近づいたところで、聞き覚えのある声が響いてきた。

 そちらに視線をやると、素早く空を飛ぶリコリスと、それを追いかける暴漢達の姿があった。


「こっちに来るんじゃないわよ!」


 リコリスは高速で飛びつつ、自分を追いかけてくる暴漢に手の平を向ける。


 すると、地面が盛り上がり植物の蔦が飛び出してきた。

 それらは意思を持っているかのように、暴漢達に絡みついて、その動きを封じる。


「ふふん、見たか! これが、絶対無敵万能超越最強完璧美少女妖精、リコリスちゃんの力よ!」


 ドヤ顔を決めるリコリスだけど……


「ふん、これくらいで止められると思うな!」

「甘いんだよ!」

「ぴゃあ!?」


 暴漢達は力任せに拘束を解いて、再びリコリスを追いかける。


「うーっ、あたしは戦闘は得意じゃないの! 補助がメインなのよ!」


 リコリスは、なぜか空へ逃げようとしない。

 暴漢達の手が届くギリギリのところを飛行して、あちらこちらを逃げていた。


 ただ、それも限界だ。

 魔法を連発したことで魔力が少なくなり、体力も減ってきた。

 だんだんと速度が落ちて、暴漢達の手に落ちる。


「ぎゃー!? 離しなさい、離しなさいよ!?」

「うるせえ、黙れ!」

「思い切り邪魔をしてくれたな? この報いはしっかりと……」

「……リコリスになにをしているのですか?」


 ザンッ!


 建物の壁を蹴り急降下したソフィアは、その勢いのまま、リコリスを捕らえる男の腕を切り飛ばした。


 たぶん、彼は革命軍なのだろう。

 街の現状を憂い、立ち上がった勇気ある者なのだろう。


 普段は善良な人なのかもしれないが……

 そんなことはどうでもいい。

 まるで関係ない。


 この男は、リコリスに手を出そうとした。

 ならば敵だ。

 一切容赦することなく、まるで迷うことなく、男の腕を切り落とした。


「大丈夫ですか、リコリス?」

「そ……そびぃわぁあああああ……」


 さすがのリコリスも怖かったらしく、滂沱の涙を流しつつソフィアにしがみつくのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新されていくと同時にリコリスの二つ名が長くなってる気が……
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