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301話 募る不満

「ってなことがあったわ!」


 しばらくしてリコリスが戻ってきて……

 とんでもない話を聞かされた。


「領主に対する不満を持つ人が集まって、武装蜂起を企んでいる……?」

「そんな話、冗談であってほしいのですが……さすがに、そんなつまらない冗談を口にする大人はいないでしょうね」


 さすがに、今日明日でクーデターが起きることはないと思う。

 まだ計画段階ということなら、入念な準備が必要なはずだ。

 今日決断されたとしても、一ヶ月以上の猶予はあると思う。


 ただ……

 事態は逼迫している、ということが問題だ。


 クーデターを企むなんて相当な覚悟がないと無理だ。

 そんな覚悟をしてしまうほどの環境が形成されているとなると……

 アルベルトの言っていることは、正しいのかもしれない。


「ソフィアはどう思う?」

「そうですね……巧妙な罠という可能性もありますが、ただ、そういうことを考えていたらキリがないですね」

「うん。ついでに言うと、僕達とアルベルトが出会ったのは、本当に偶然だと思うんだ。それなのに、これだけの規模の罠を用意しておくなんて不可能だと思う」

「と、なると……」

「ひとまず、アルベルトは嘘を吐いていない、って判断してもいいんじゃないかな」


 もちろん、全てを信じることはできない。

 実は秘めた野望があって、僕達を利用しようと企んでいるかもしれない。


 でも、ソフィアが言ったように、そういう可能性を考えたらキリがないから……

 ひとまず、もっとも可能性の高い方向で話を進めたいと思う。


「で……結局のところ、あたしらはどうするの?」


 リコリスが根本的な問いかけを投げてきた。


「うーん、悩ましいところだよね……」


 アルベルトの言っていることが正しいとしても、彼に協力するかどうかは別の話だ。


 僕達と関係ない、っていう話じゃなくて……

 問題は、アルベルトがやろうとしていることにある。


 現状、領主が悪政を敷いている可能性は高いと思う。

 それをなんとかしたい、っていう気持ちはわかるんだけど……


「簒奪なんて……いいのかな?」


 正しいことを成すために正しくないことをする。

 アルベルトがやろうとしていることは、つまり、そういうことで……


 そんな彼に力を貸していいのか、迷って悩んでしまう。


「私は……」

「うん」

「……協力しても良いと思いました」


 ちょっと意外な答えだった。


「どうして?」

「世の中、正しいことが全てではありません。時に非情な手段を取ることが必要になります」

「それは……」

「この街に残された時間は少ないです。まっすぐな手段で正そうとしても、時間がかかり、その分被害が大きくなります。それに、時間をかけてしまうとクーデターが起きて、さらに混乱が大きくなるでしょう。そうなる前に……というのは、わからない話ではありませんから」

「うん……そうだね」


 正しいことだけを成そうとしてもうまくいかない。

 そのことは、奴隷だった経験がある僕にはよくわかる。


 だから、アルベルトのやろうとしていることも理解できた。


 できたんだけど……


「……」


 なんか、しっくりとこない。

 もやもやした感じが残る。


 僕は、そこまで潔癖なつもりじゃなかったんだけど……

 やっぱり、簒奪っていう強引な方法が許せないのかな?


「フェイトは、やはり反対ですか?」

「えっと……」

「私はフェイトに従います。彼に協力しても良いですし、王都への旅を優先しても構いません。まったく別の、第三の道を探すというのでも大丈夫ですよ」


 どんな選択肢も受け入れる、というような感じで、ソフィアがにっこりと笑う。

 そんな彼女の笑顔を見ていたら、不思議ともやもやが消えていった。


「……うん、アルベルトに協力しよう」

「いいんですか?」

「思うところはあるけど……大丈夫。それに、こんな状況を知ったのに知らなかったフリをするなんて、そんなことはしたくないから」

「ふふ、それでこそ、私の大好きなフェイトです」


 ソフィアが嬉しそうに笑い、


「いい、アイシャ? あれがドバカップル、っていうヤツよ」

「ド?」

「バカップルを超越した、さらに進化したバカップルね。周囲の目なんか気にしない。いつでもどこでも二人きりの世界を作り、イチャイチャすることができる」

「おー」

「アイシャに変なことを教えないでください!」


 そして、いつものようにリコリスが変なことを言ってソフィアに怒られる、というパターンが形成されるのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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