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300話 リコリスちゃんの大冒険

 領主の屋敷を出たリコリスは、ふわふわと街の上を飛んでいた。


 妖精は希少種だ。

 フェイトとソフィアがいない状態で人前に出たら、捕まってしまうかもしれない。


 それくらいの危険を考える頭も、リコリスには一応あった。


「さーて、領主の情報、どこかに落ちてないかしら?」


 いちいち聞き込みなんてしていられない。

 そんなことをしても、正解の情報を持つ人にたどり着くのに、どれだけの時間がかかることか。


 それよりは人々の話を盗み聞きした方が早い。

 領主に関する噂を収集できるし……

 それだけじゃなくて、こっそりと真実を話している者もいるかもしれない。


 そういう時もあるため、わりと有効な手だ。


「ふふん、リコリスちゃんイヤーは、どんな会話も聞き取るのよ!」


 一人なのに、リコリスはドヤ顔を決める。

 調子に乗らないと生きていけない種族なのかもしれない。


「んー……」


 魔法で聴覚を増幅。

 さらに、必要な情報と不要な情報を選別。


 そうして、街の上空で人々の会話を盗み聞きして……


「カーッ! カーッ!」

「ぴゃあ!? び、びっくりさせるんじゃないわよ!?」


 カラスに襲われて、リコリスは慌てて魔法を使って追い払った。

 餌と勘違いされたのだろう。


「まったく、失礼なカラスね。こんなにかわいいリコリスちゃんを見て、餌と勘違いするなんて。ううん。もしかしたら、妻にしようと思ったのかしら? 異種族も魅了するあたし……ふっ、罪な女ね」


 ツッコミ役が不在のため、誰もリコリスを止められない。


「さてと、続き続き、っと」


 リコリスは再び盗み聞きを始めた。


 今日の天気。

 子供がなかなか言うことを聞いてくれない。

 景気が悪く、儲けることが難しい。


 色々な会話が聞こえてくるものの、領主に関する情報は乏しい。


「んー、もうちょっと確定的な情報がほしいわね。もっと選別しないとダメね」


 リコリスは、追加で魔法を発動させた。

 望む会話だけを届けて、他は切り捨てるという条件を追加したものだ。


 そんな魔法、妖精であっても普通は使えないのだけど……

 リコリスは特別だった。


 実のところ、彼女はかなり優秀だ。

 魔法に関していえば、世界でトップクラスの腕を持つ。


 ……日頃の言動で、威厳などは皆無になってしまっているが。


「おっ、これなんてよさそうね」


 とある会話が聞こえてきて、リコリスは機嫌良さそうな顔に。


 詳細な場所はわからないが、街の北部……

 住宅街から聞こえてきた。


 複数の人の声。

 なにやら議論をしているらしいが、ヒートアップしているらしく、その声量は大きい。


 手遅れになる前に……

 このままでは街の経済は崩壊してしまう……

 あの人は自分のことしか考えていない……

 最悪、武装蜂起も視野に入れて今後の活動を……


「ふんふん……なにやら、面白そうなことを話しているじゃない」


 リコリスはニヤリと笑い、北の住宅街に飛んでいった。


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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