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299話 時に過激な方法も

 その日は、そのまま屋敷に泊まることになった。

 アルベルトの客人として、滞在許可が降りたのだ。


 僕達に与えられた客室は一つ。

 でも、とても広く、ベッドも四つあった。


「あー、ふかふかのベッド、素敵だわー」


 リコリスはさっそくベッドにダイブするものの、僕達はそんなことはしない。

 部屋の中を見て回り、間取りを確認して……

 それと、とあるものを探す。


「フェイト、どうでしたか?」

「大丈夫だと思うよ」

「私の方も、問題ありませんでした」

「おとーさん、おかーさん。なにをしているの?」


 アイシャが不思議そうに小首を傾げた。


「えっと……盗み聞きをしている悪い人がいないか、調べていたんだ」

「おー」

「アイシャちゃんも、誰かに見られたりしたら嫌でしょう? だから、色々と確認をしていたんですよ」


 正直なところ、アルベルトのことは信用していない。


 話に矛盾はなかったけど……

 でも、それだけで出会ったばかりの人間を信用することはできない。


 それは向こうも同じのはず。

 だから、客室に盗聴の魔道具を仕掛けるなどすると思っていたんだけど……

 それらしいものを見つけることはできなかった。


 アルベルトは僕達のことを信用している……なんて、そんな甘い話はないと思う。

 盗聴の魔道具などを設置して、見つけられてしまった時は立場が悪くなる。

 だから、あえてなにもしない……そんなところだと思う。


「これなら、一応、気兼ねなく色々な話をすることができるね」

「どうでしょうか……私達が盗聴の魔道具を見つけられなかった、という可能性もあります。あるいは、そういったものに頼らず、相手の動向を探ることができる方法を持っているかもしれません。そういうことを考えると、なかなか……」

「いいんじゃないかな?」

「え?」

「その時は、その時だよ。アルベルトが妙な行動に出たら、それはそれでわかりやすいよ。敵、って判断できる」

「……」

「なにも仕掛けられていないなら、それはそれでよし。少しだけ彼を信用することができる。どっちに転んでも損はないんじゃないかな?」

「……フェイトは、いつの間にか大きくなっていたのですね」

「え? え?」


 ぎゅうっと、抱きしめられてしまう。

 なんで?


 というか、その、当たって……


「ふふ、気持ちいいですか?」

「な、なんのことかな!?」


 慌ててソフィアから離れた。


「そ、それよりも、これからのことを決めないと」

「ごまかしましたね?」

「おとーさん、ごまかしたー」

「アイシャまで!?」

「子は親のことを真似るものよ」


 リコリスが苦笑して、そう締めくくる。


「まあ、冗談はここまでにして……フェイトの言う通り、今後のことを話し合いましょう」

「アルベルトに協力するか、しないか……だね」


 彼がやろうとしていることは、とても過激なことだ。


 例えるなら……

 足が病気になった時、普通は、病気の原因を特定して治療しようとする。

 しかしアルベルトの場合は、他に病気が転移しないうちに、足を切り落としてしまう、というものだ。


 とても過激な方法だけど、でも、一概に否定することもできない。

 時と場合によっては、それが正しいこともある。


「もうどうしようもないほど領主が腐っているとしたら、彼のすることは正しいですね」

「うん……時間をかければかけるほど、街がダメージを受けてしまう。たくさんの人が苦しむことになる。だから、そうなる前に一気に決着をつける。悪いことじゃないと思う」

「ですが……彼の話が正しい、という前提があってのことですが」


 そこだ。


 アルベルトの話を聞いただけで、他に情報を持っていない。

 彼が正しいのか。

 それとも、実は領主が正しいのか。

 それを判断することができない。


「まずは情報を集めないといけないね」

「しかし、私達の外出が許されるかどうか……」

「なら、このウルトラミラクルウルトラ妖精リコリスちゃんに任せなさい!」


 今、ウルトラって二回言ったよね?


「あたしなら、すいすいっと抜け出して情報を集めてくることができるわ」

「「……」」

「二人揃って疑いの眼差し!?」

「だって……」

「ねえ?」


 普段のリコリスの言動を知ると、どうにもこうにも不安になってしまう。


 大丈夫だろうか?

 なにかやらかしたりしないだろうか?

 不用意にトラブルを持ってきたりしないだろうか?


 心配の種は尽きない。


「大丈夫よ! このあたしが、見事、大きな情報を持ち帰ってみせるわ!」

「あっ、リコリス!?」


 止める間もなく、窓の隙間からリコリスが飛び出してしまった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 大丈夫かな? なんか、リコリスはルナみたいな雰囲気あるから・・・。 あ、でも、こういうときはリコリスはしっかりやる・・・はず??(やっぱり不安)
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