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292話 怒られた……

 水神を倒したことで、嵐はピタリと止んだ。


 雨は上がり、風は穏やかなものに変わる。

 空を覆っていた雨雲も消えて、太陽が顔を見せた。


 氾濫寸前の川は、すぐに元に戻ることはないけど……

 数日もすれば元の水位に下がるだろう。


 アクアレイトは救われた。

 誰かの力になることができた。


 そのことはとても嬉しい。

 嬉しいのだけど……




――――――――――




「むううう……!」


 宿へ戻ると、不機嫌そうなソフィアが。

 そんな彼女の前で正座をする僕とリコリス。


「無茶はしない、って約束しましたよね?」

「う、うん。そうだね」

「でも、リコリスの話を聞く限り、無茶をしたみたいですね?」

「そ、そうかな……? 無茶っていうほど無茶はしていないような……」

「一歩間違えたら、死んでいたかも……という攻撃を受けたと聞いていますが」

「うっ」


 最後、水神が口から放ってきた水流のことだろう。

 確かに、あれが直撃していたら即死だったと思う。


「危ないと感じた場合は、即撤退。二人で挑む……という約束をしていましたよね?」

「えっと……あれくらいなら、そんなに危ないことは……」

「危ないです!」


 ピシャリと言われてしまい、反論の言葉を失う。


「前々から思っていましたけど、フェイトは自分のことに対して鈍感です。他人の痛みには敏感なのに、自分のことになると途端に鈍感になって、おざなりになってしまいます」

「そう……なのかな?」

「そうです!」


 そんな自覚はなかった。


 でも……

 そう指摘されると、ソフィアの言う通りかもしれない。


 奴隷生活が長かったから、誰かのために、と思うことが自然になって。

 自分のことをないがしろにしていたのかもしれない。


「……もう」

「そ、ソフィア……?」


 突然、ソフィアに抱きしめられてしまう。

 ぎゅうっと、強く強く抱きしめられてしまう。


 でも、痛いと思うことはなくて……

 むしろ、温かくて優しい気持ちになれた。


「話を聞いて、とても心配したんですからね……」

「……ごめん」

「罰として、このまま抱きしめさせてください」

「それ、罰なの?」

「罰です」

「そっか……なら、じっとしていないとだね」

「はい」


 静かで優しい時間が流れて……


「じー……」

「オフゥ……」

「「っ!?」」


 アイシャとスノウがいることを思い出して、僕とソフィアはビクリと震えた。

 顔を熱くしつつ、慌てて離れる。


「おとーさん、おとーさん」

「な、なに?」

「わたしも、ぎゅってして?」

「う、うん。もちろん! ほら、ぎゅー」

「えへへ」


 抱きしめると、アイシャは嬉しそうに尻尾を振った。


「にひひ、アイシャが純粋でよかったわね」

「……うるさいですよ」


 リコリスにからかわれて、ソフィアはさらに顔を赤くするのだった。


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] このストーリーも楽しく読んでますよ!作者さん! リコリスに至っては私の妄想シリーズにも登場してますから!
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