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289話 悪いけど……

 僕は剣を構える。


「我と戦うつもりカ?」

「そうだね」


 水神が僕達人間を家畜として見ているのは、別に咎めるつもりはない。

 人間も同じことをしているから、咎める権利なんてない。


 でも、素直に従うかどうかは別だ。


 されるがままとか。

 言われた通りに生贄を捧げるとか。

 おとなしくやられるとか。


 そうそう思い通りにいかないっていうことを、教えてやる!


「愚かナ。人間ごときが我に敵うとでモ?」

「やってみないとわからないよ」

「くだらヌ。もういイ、消えヨ」


 水神は全身を竜巻のように激しくうねらせつつ、回転した。

 その勢いを乗せて、尾を叩きつけてくる。


 ガァッ!!!


 石畳が大きくえぐれ、破片が飛び散る。


 なんて破壊力だ。

 まるで、爆弾が炸裂したかのよう。


 咄嗟に跳んで避けたものの……

 直撃していたら、そこで終わりだっただろう。


「でも……それなら、全部避ければいいだけだよね!」

「ム!?」


 水神が攻撃するよりも早く動いて、撹乱してやる。


 右手に回り込み……

 急旋回して、水神の左手へ移動。

 それから前後の移動を繰り返して、常に攻撃を避ける。


 流れてきた倒木などがあるから、足場には困らない。


「ネズミのようにちょこまかト!」

「体が大きいと大変だね!」

「グッ!?」


 すれ違いざまに一撃を叩き込む。


 剣の半ばまでを食い込ませたのだけど……

 相手が大きすぎるせいで、大したダメージにはなっていないみたいだ。


 ここまで大きいと、ものすごく苦戦しそうだ。

 ある意味で、今までで一番の強敵かもしれない。


「人間ごときガ!」

「偉そうに言っているけど、その人間ごときに取り引きを持ちかけたあなたは、どれくらい偉い存在なのかな? そうでもないよね」

「貴様!」


 挑発は成功して、水神の攻撃がさらに激しくなった。


 苛烈な攻撃が続くけど……

 でも、怒りに任せた攻撃なので、精度が甘い。

 簡単に狙いを読めるようになったので、さっきよりも楽に避けることができた。


「とはいえ……」


 適度に反撃を繰り出しているけど、致命的なダメージには程遠い。

 この分だと、あと何回、斬りつけないといけないかわからない。

 下手をしたら、数時間、戦闘が続くかも。


 体力の心配はあまりしていない。


 奴隷だった頃、もっと過酷な環境で三日間、寝ずに働いたことがあるし……

 まだまだ余裕だ。


 でも、街の被害が気になる。

 これ以上、水神が派手に暴れたら、どうなるか。

 街に致命的な被害が出てしまうかもしれない。


 そんなことになる前に、どうにかして倒したいんだけど……


「フェイト」


 ポケットから、リコリスがひょこっと顔を出した。

 状況は把握しているらしく、珍しく真面目な顔だ。


「あたしに任せなさい!」


 訂正。

 いつものドヤ顔だった。

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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