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282話 王都へ

 翌朝。

 太陽が昇って間もない時間に獣人の里を発つことにした。

 アイシャは眠そうにしてて申しわけないのだけど、明るいうちに距離を稼いでおきたい。


「お世話になりました」

「こちらこそ、色々と助けていただき、本当に感謝しております」


 クローディアさんと握手を交わす。

 他にも、見送りに来てくれた長や顔見知りの獣人達と握手をした。


「姫様と神獣様のこと、よろしくお願いいたします」


 意外というか、クローディアさん達は、僕達が二人を連れていくことに反対しなかった。

 思うところは色々とあったみたいだけど、それは口に出さないで、こちらの判断を尊重してくれた。


 いや。

 アイシャとスノウの判断を……かな?


 二人が僕達と一緒にいることを望み……

 そんなアイシャとスノウの想いを汲み取ってくれた形になる。


 ひょっとしたら揉めるかもしれない。

 そんなことを考えていたから、クローディアさん達の判断に感謝だ。


「……少しいいですか?」

「え? はい」


 クローディアさんに小声で誘われて、二人きりになった。


「お願いがあります」

「なんですか?」

「黎明の同盟の目的は復讐……今も生きているかどうか、それはわかりませんが、昔の神獣様が関わっていると思います」

「そう……ですね」


 人間に裏切られて。

 大事なものを奪われて。

 その恨みと怒りが今も続いている。

 継ぐ者がいる。


「もしも、かつての神獣様が今も生存してて、黎明の同盟の指揮をとっているのだとしたら……討ってくれませんか?」

「それは……でも、いいんですか?」

「構いません」


 クローディアさんの心情としては、神獣に寄っているはず。

 それなのに、討ってほしいなんて……


 僕の考えていることを察した様子で、クローディアさんは苦い表情に。


「……確かに、心情的には神獣様の味方でありたいです」

「なら……」

「ですが、愚かな行いをした人間はもういません。とっくに死んでいます」

「……」

「それなのに、今の人間に復讐をするのは……間違っていると思うのです。それは正当な復讐ではなくて、ただの八つ当たりです」

「そう……だね」


 それと、もう一つ。

 彼らの行いを許してはいけないところがある。


 黎明の同盟は、復讐のために力を求めた。

 そのために魔剣を作り力を得て、同時に、世界を混乱に陥れようとした。


 でも……


 魔剣を作るためにアイシャを狙う。

 同じような獣人を狙う。


 仲間の無念を晴らすために仲間を犠牲にする。

 そんなこと間違っている。


「ですから、どうか……」

「はい。約束します」


 色々な想いがある。

 僕達にも黎明の同盟にも、それぞれの正義がある。


 だから僕は、自分の信じる道を進もう。




――――――――――




「ばいばーい」


 スノウの背中に乗るアイシャが、見送りをしてくれるクローディアさん達に手を振る。

 微笑ましい姿に自然と笑みがこぼれた。


「……フェイト」

「うん?」

「さっきはなにを話していたのですか?」

「……後のことはお願い、っていう話かな」

「そうですか……なら、がんばらないといけませんね」

「そうだね」


 ソフィアと二人、決意を新たにしていると、


「ねえねえ、王都までどれくらいかかるの?」


 リコリスがふわりと目の前にやってきて、そう尋ねてきた。


「えっと……」

「歩きだと二ヶ月くらいですね」

「にっ!?」


 リコリスがふらふらと地面に落ちる。


「そんなに歩いてられないわ……かよわいリコリスちゃんには酷な旅よ」


 リコリスはいつも飛んでいるのでは……?


「大丈夫ですよ。少し先に行ったところにある街で馬車を拾います。それなら、二週間ほどでつきますよ」

「それでも二週間かかるのね……」


 再びリコリスがふらふらになってしまう。

 性格的に退屈を嫌っているんだろうな。


 気持ちはわかるけど、こればかりはどうしようもない。


「ま、仕方ないわね! こうなったら、その街で観光を楽しみましょ!」

「中継地点だからね……?」


 切り替えが早いのもリコリスの特徴だった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] かよわい? ガヤガヤしてるの間違いなのではなかろうか? リコリスよ。
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