281話 今夜は一緒に
「アイシャとスノウのことだけど……」
仲直りをした後、二人の話をする。
「ソフィアの言う通り、一緒に連れて行こうと思うんだ」
「えっと……いいのですか? フェイトはフェイトなりの考えがあったと思うのですが……」
「うん、そうだね。里で匿ってもらったら安全だと思っているよ」
「なら、どうして?」
「……ソフィアの方が二人のことを気にかけていたから、かな」
僕は、リコリスに言われるまでアイシャとスノウのことを忘れていた。
自分のことしか考えていなかった。
でも、ソフィアは違う。
誰に言われるでもなく、二人のことを自然と気にかけていた。
僕とケンカをしていた時も、途中で二人を一番に考えるようにした。
その差はとても大きいと思う。
「……そんなソフィアの意見なら正しいと思うんだ」
「そう……でしょうか?」
「そこで不安そうにならなくても」
「実のところ……フェイトの意見も一理あると思っていまして。どちらも正しい……みたいな感じでしょうか? なので、正しいかどうか、それは……」
「大丈夫」
ソフィアの手をそっと握る。
彼女の不安は理解できた。
逆の立場だったら、僕も不安になっていたと思う。
でも……
そういう時のために僕がいるんだと思う。
「僕がソフィアを支えるよ。この選択が正解だった、って思えるように、一生懸命がんばるよ」
「……フェイト……」
「だから、自信を持って。いつものかっこいいソフィアになって」
くすり、とソフィアは小さく笑う。
「かっこいい、というのは女性に対しての褒め言葉ではありませんよ?」
「ご、ごめん……つい」
「でも、フェイトにそう言われると、とてもうれしいです」
ソフィアも僕の手を握る。
手と手が触れ合い、熱が伝わる。
温かくて、優しくて、心地よくて……
ふんわりするような気分に。
ずっとこうしていたい。
「これからも、私を助けてくれますか?」
「もちろん」
「なら、私もフェイトの隣にいますね……ずっと」
「う、うん」
ともすれば、それはプロポーズみたいで……
意識してしまった僕は、ちょっとぎこちなくなってしまう。
ソフィアは無意識に言ったらしく、特に気にしていないみたいだ。
指摘したら……
たぶん、恥ずかしがって混乱すると思う。
やめておこう。
この幸せとむずがゆさは、今は独り占めだ。
「じゃあ、アイシャとスノウに今の話を……」
「待ってください」
部屋を出ようとしたら、繋いだ手を引っ張られて引き止められてしまう。
「どうしたの?」
「もう遅いから、二人も寝ていると思います。明日でいいのでは?」
「あ、それもそうだね」
「それよりも今は……」
ソフィアは、どことなく熱っぽい視線をこちらに向けてくる。
「今はもう少し……フェイトと二人きりでいたいです」
「え? そ、それは……」
「そ、その……変な意味ではなくてですね? 最近、色々あって二人きりになれなかったので……たまには、と」
言われてみると、二人きりの時間を持つことがなかった。
アイシャとスノウと一緒にいるのが嫌、っていうわけじゃない。
二人との時間はとても大事で幸せだ。
でも、それとは別に、ソフィアと二人きりの時間が欲しいというわがままもある。
「なら……もう少し一緒にいようか?」
「はい!」
ソフィアはとびきりの笑顔で頷くのだった。




