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280話 仲直り

 一番に考えないといけないのは、アイシャとスノウのこと。


 そんな当たり前のことを忘れていて……

 そして今、思い出すことができて……


 なんていうか、雷に打たれたような衝撃を覚えた。


「フェイトもソフィアも、自分のことばかり考えないの。あの子の家族なんでしょう? ならしっかりしなさい!」

「……うん、そうだね」


 まったく反論できない。

 僕が全面的に悪い。


 僕達がケンカをしている間、アイシャとスノウはすごく不安だっただろう。

 今思い返してみれば、笑顔が消えていたような気がする。


 そうさせてしまったのは僕のせい。


「うぅ……すごく情けないよ。僕、二人のためにがんばる、って決めていたのに……」

「ま、完璧にはいかないわよ」


 リコリスの声音が少し柔らかくなった。


「無敵超妖精リコリスちゃんと違って、人間なんて間違いをするのが当たり前なんだから。今回みたいなことをしても、仕方ないんじゃない?」

「でも……」

「ほら、そこでうじうじしない。間違いっていうのを理解したなら、反省はほどほどでいいの。次を考えなさい、次を。そして、すぐ行動に移るの」

「……リコリス……」

「返事は?」

「うん!」


 リコリスのおかげで完全に目が覚めた。

 やるべきことを今すぐにやろう。


 急いで部屋を出ようとして……

 扉の前で立ち止まり、振り返る。


「ありがとう、リコリス」

「お礼なんて、超おいしいクッキーでいいわよ」

「あはは、了解。王都に行ったら探してみるよ」

「あと、はちみつもほしいわ。天然ものね」

「それは確約できないけど……うん、探してみるね。それと……」

「ん?」

「リコリスも大事な家族だから、なにかあったら絶対に力になるから」

「……」

「じゃあ、行ってくるね!」




――――――――――




「……なによ、ちょっとドキッとさせられたじゃない」





――――――――――




「ソフィア!」

「ひゃ!?」


 勢いに任せてソフィアの部屋を訪ねた。

 驚かせてしまったらしく、ソフィアはひっくり返ったような声をこぼす。


「な、なんですかいきなり……? というか、せめてノックくらい……」

「ごめん!!!」


 僕は勢いよく頭を下げる。


「ソフィアとケンカをしたいわけじゃないんだ。仲直りしてくれないかな?」

「……それは、自分の考えが間違っていた、ということを認めるのですか?」

「ううん。僕は、僕の考えが正しいと思っているよ」

「はぁ?」

「でも、だからといってソフィアとケンカをしたいわけじゃないんだ。違う意見になったのなら、もっともっと話し合えばよかったんだ。それなのに意地になって、あんなことを言って……だから、ごめん!」

「……フェイト……」


 ソフィアの表情から険が取れていく。


 そっと立ち上がり、僕の前に。

 そして……


「フェイト!」

「わぷっ」


 ぎゅうっと抱きしめられてしまう。


「私も……私も、フェイトとケンカなんてしたくありません。意地になってしまい、すみませんでした」

「……ソフィア……」

「フェイトなら、なんでも私に賛成してくれると思っていたのかもしれません。そうやって、甘えていたのかもしれません。本当に申しわけありません……」

「ううん、気にしていないよ」

「それに……」


 ソフィアが憂い顔で言う。


「今回のことで、アイシャちゃんとスノウに心配をかけてしまいました。二人にも謝らないと……」

「そっか……ソフィアは、誰に言われるまでもなく二人のことを気にかけていたんだね。はぁ……僕、ダメだなぁ」

「フェイト?」

「僕、リコリスに怒られるまで二人のことを忘れていて……ダメだね。本当に」

「仕方ありません。私も、少し前にアイシャちゃんとスノウのことを思い出して……同じくダメダメです」

「……」

「……」


 少しの沈黙。

 そして、


「あはは」

「ふふ」


 どちらからともなく笑う。


「僕達、まだまだなのかもしれないね」

「そうですね。でも……」

「うん。二人一緒なら、なんでもできると思う。だから……」

「仲直り、ですね」


 ソフィアが笑顔で手を差し出してきて……

 僕もにっこりと笑い、その手を取るのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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[一言] バカップル たまにはケンカも いいかもね
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