275話 次なる一手は?
結界を構築して、この地を浄化するため、僕達を含めて里のみんなが動いた。
必要な素材を集めて。
準備を進めて。
その一方で、二度目の襲撃に備えて警戒も怠らない。
斥候の目は欺くことができたけど、もしかしたらすぐにバレてしまうかもしれない。
あるいは、二度目の斥候がやってくるかもしれない。
そういった時に備えての行動だ。
そうやってみんなで協力して準備が進められて……
翌日。
結界構築の準備が完了した。
「こちらへ」
クローディアさんの案内で、里にある神殿へ。
普段は、ここで祈りが捧げられているらしい。
人間で言うと教会のようなものだ。
そんな神聖な場所だからこそ、結界の起点としてうってつけらしい。
すでに準備は整えられていた。
床には魔法陣が。
前後左右に魔力が込められたクリスタルなどなど。
「姫様、神獣様、こちらの魔法陣へ」
クローディアさんが二人を魔法陣へ導いた。
「えっと……」
「大丈夫だよ」
「私達はここにいますからね」
ちょっとだけ不安そうにするアイシャに、僕達は笑ってみせた。
それで不安がとれたらしく、アイシャは、がんばるぞ! と小さな拳をぎゅっと握り、魔法陣の上へ。
「そこで祈りを捧げてください」
「祈り……?」
「はい。姫様や神獣様の想いが一番大事な力となるので……後の細かいことは、私達が引き受けます」
「……がんばる」
アイシャは膝をついて両手を合わせた。
スノウは床にお尻をつけて、ピシリと座る。
そして、共に目を閉じて祈りを捧げる。
「「……」」
アイシャとスノウの体から光があふれていく。
それらはとても優しく温かくて……
意味もなく泣いてしまいそうになるほど、懐かしいものでもあった。
――――――――――
結界は無事に構築された。
同時に里の浄化も完了して、溜め込まれていた負の感情は綺麗さっぱり消失した。
大成功だ。
「すぅ、すぅ……んゅ……」
「スピー……スピー……」
アイシャとスノウは、ベッドで抱き合うようにして寝ていた。
結界の構築で疲れたらしい。
今はゆっくりと休んでほしい。
僕とソフィアは二人の寝顔を少し見た後、そっと部屋の扉を閉じた。
そのまま一階に降りて、クローディアさんと合流する。
ちなみに、ここは僕達のために用意された家だ。
アイシャとスノウがいるからなのか、里で一番良い家を用意してくれた。
「姫様と神獣様は……?」
「ぐっすり眠っています。少し疲れちゃったみたいです」
「そうですか……」
クローディアさんが難しい顔に。
結界の構築や里の浄化は必須だったけれど、アイシャとスノウに負担をかけてしまったのではないか? と気にしているらしい。
「クローディアさんが気にすることはありませんよ」
「しかし……」
「アイシャとスノウがやるって決めたことです。だから、大丈夫です」
それに、二人はまったく気にしていないと思う。
むしろ、里を助けることができて誇らしく思っているはず。
「それより、次のことを考えましょう」
「フェイトの言う通りですね。黎明の同盟の目的がハッキリした以上、放置なんてしておけませんから」
ちょっと意外だった。
ソフィアが、まさかここまでやる気を見せるなんて。
「あんな泥棒猫を放置しておいたら、どうなるかわかったものではありません。フェイトは、私だけのものです!」
ぎゅうっと、抱きしめられてしまう。
やっぱり、ソフィアはソフィアだった。
「でも、次はどうすればいいのかな……?」
黎明の同盟の目的は判明した。
でも、組織の規模や構成員。
本拠地も場所も、わからないことの方が多い。
「……ふむ」
クローディアさんが考えるような顔に。
ややあって口を開く。
「では、釣りをしてみるというのはいかがでしょう?」




