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272話 わかり合いたい

 レナの襲来があったこと。

 そして、黎明の同盟の目的。

 それらの情報を、クローディアさんと獣人の里の長を含めたみんなで共有した。


「そうですか、彼らが……」

「あの馬鹿者共め」


 長はしんみりとした様子を見せた。

 そしてクローディアさんは、苛立たしいような悲しんでいるような、そんな複雑な表情になる。


 僕が話をするまでもなく、黎明の同盟の目的、正体を知っていたのだろう。


 それでもなにもしなかったのは……

 たぶん、信じたかったから。


 これ以上、とんでもないことはしないと。

 いつか分かり会えるはずだ、と。

 そう信じていたから、あえてこちらからはなにもしなかったんだと思う。


 甘い考えだ、って言われるかもしれない。

 でも、僕はその方が好きだ。


「申しわけありません、私達の事情に巻き込んでしまいました……」


 クローディアさんが頭を下げるものだから、ついつい慌ててしまう。


「そんな、気にすることないですよ!」

「そうですね」

「しかし……」

「アイシャちゃんとスノウのことがあるので、どちらにしろ、私達も巻き込まれていた……いいえ、この言い方はよくありませんね」

「僕達も関係者です」


 アイシャとスノウは家族だ。

 そして、家族の問題は僕達の問題でもある。


 放っておけるわけがないし、見てみぬ振りもできない。


「なにができるかわからないですけど、協力させてください」

「ひとまずは、用心棒として私達を雇いませんか? お代は、里にいる間、宿を提供していただく、ということで」

「フェイトさん、ソフィアさん……」


 クローディアさんはぐっと言葉を詰まらせて……

 それから、深く頭を下げた。


 そこまでしてもらわなくてもいいのに。

 どちらかというと、僕達、人間のせいでこうなっているわけだから。


「とにかく、対策を考えないといけませんね」

「たぶん、レナは里を探していたんだと思う。まだ見つけていないみたいで、追い払うことはできたけど……」


 この様子だと、里が見つかるのは時間の問題だ。

 そうなると、どうなるか?


 黎明の同盟は、目的と手段を履き違えている。

 獣人の里を見つけたとなれば、復讐のための力を得るために、生贄にしてさらなる魔剣を作ろうとするだろう。


 里の人に犠牲を出すわけにはいかないし……

 下手をしたら、アイシャやスノウも連れ去られてしまうかもしれない。

 それだけは絶対に避けないと。


「ふむ……ならば、結界の修復が急務ですな」


 少し考えてから、長がそう言った。


「結界は、魔物だけではなくて悪意あるものからも守ってくれます」

「そんな便利な機能が」

「もちろん、絶対無敵というわけではありません。その気になれば破壊されてしまうでしょうが……それでも、我らの存在を隠して、時間を稼ぐことはできるでしょう」

「なら、決まりですね」


 次にやるべきことは結界の修復だ。


「アイシャとスノウの力が必要って言ってましたけど、具体的にはどうするんですか?」

「姫様と神獣様に祈りを捧げていただくのです」

「祈りを?」

「想いは、時に強い力となる。姫様や神獣様の祈りとなれば、結界を形成するほどに」

「なるほど」


 火事場の馬鹿力、っていう言葉があるように、想いの力は確かにあると思う。

 そして、それは思いがけない力を発揮するものだ。


「なにか力になれませんか?」

「でしたら、姫様と神獣様と一緒にいてください。お二人のことをとても信頼しているみたいなので」

「わかりました。それくらいなら、もちろん」


 言われなくても二人の傍にいるつもりだ。


「では、さっそく……」

「た、大変です!」


 扉を蹴破るような勢いで、一人の獣人が長の家に入ってきた。


「なにごとじゃ、騒々しい」

「姫様と神獣様がいません!」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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