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270話 同じ者だからこそ

 泣いているレナを見たら、僕は、胸が苦しくなってしまう。

 そんな顔は見たくない、って思う。


 僕とレナは同じだ。


 抱えているものの大きさはぜんぜん違うけど……

 僕達は、共に虐げられてきた。


「安い同情なんかしないで……!!!」


 レナが強く睨みつけてきた。

 怒りが全身からあふれている。


 同情なんてするな。

 心に踏み込んでくるな。

 優しいフリをするな。


 ……そんな感じで、レナは僕を拒絶する。


「フェイト」


 そっと、ソフィアが隣に立つ。


「いまいち状況が掴めていないのですが……」

「え? そうなの?」


 てっきり、レナや黎明の同盟のことを突き止めて、応援に来てくれたと思っていたんだけど。


「妙に嫌な感じがしまして。それでフェイトを探してみたら、あの泥棒猫がいたので、とりあえず斬りかかってみました」

「とりあえず、って……」


 直情的すぎないかな?


 いや、まあ。

 そのおかげで助けられたから、強くは言えないんだけど。


「詳しいことは後で説明するよ」

「わかりました。では、この泥棒猫の処刑を……」

「まってまってまって」

「はい?」


 どうして止めるの?

 と、本気で不思議そうな顔をするソフィア。


 怖いから。


「レナのことは僕に任せてくれないかな?」

「心配です」

「僕なら大丈夫。それに、レナもきちんと話せばわかってくれると思うんだ」

「……わかりました。フェイトにお任せいたします」


 ソフィアは小さく頷いて、剣を鞘に収めてくれた。

 ただ、その状態のまま、柄は握ったままだ。


「ですが、いざという時は斬るので」

「うん、それでいいよ」


 ソフィアが過剰に反応しているのは、僕を心配してくれているからだ。

 その気持ちを否定するようなことはしたくない。


 よし。


 改めてレナと向き合う。


「ねえ、レナ」

「……なに?」

「僕は、同情は悪いことじゃないと思うんだ。相手の気持ちになって考えること、共感すること、っていう意味だもの」


 押し付けがましくなったり。

 勝手に、かわいそうだ、と決めつけたり。

 それは微妙なことかもしれないけど……


 でも、無視されるよりはいいと思う。

 どうでもいいとか思われるよりは、ずっとマシだと思う。


 少なくとも、同情してもらっているということは、関わろうとしてくれていること。

 そこから関係が発展することもあると思うんだ。


「レナは知らないかもしれないけど……僕、騙されて奴隷にされていたことがあるんだ」

「え?」

「十年くらいかな? ずっとひどい扱いを受けていて……だから、レナの気持ちはわかるつもりなんだ」

「……」

「他人に思えなくて、だから嫌いになりたくなくて……」


 そっとレナに手を差し出した。


「だから、もうやめよう?」

「……フェイト……」

「友達になってくれませんか?」

「あ……」


 レナの目が大きくなる。


 僕の手を見て、自分の手を見て……

 交互に見て、それからそっと口を開いた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] とうとう、最新話近くまで来ましたか・・。 この物語も読んでいて楽しいので、どうか最後まで駆け抜けてください!
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