269話 VS・レナその3
「このぉっ!!!」
「はぁあああああ!!!」
ソフィアと同時に前へ出た。
剣を構えつつ駆けて……
僕は右から。
ソフィアは左から。
交差するように、同時に剣を払う。
「ぐっ!?」
僕とソフィアのタイミングが完全に一致して、レナに重い一撃を叩き込むことに成功した。
防がれてしまうけど、でも、彼女は顔をしかめている。
たぶん、予想外に重い一撃に手が痺れたのだろう。
今がチャンスだ。
「これで……」
追撃の一閃。
しっかりと捉えたと思ったんだけど、でも、驚異的な反射神経で防がれてしまう。
手が痺れていてコレなのだから、レナは本当に強い。
でも、僕だけじゃない。
「終わりです!」
続けて、ソフィアが前に出た。
レナに激突するような勢いで駆けて、その勢いを乗せた突きを繰り出す。
狙いはレナの急所じゃない。
彼女の右手だ。
「あっ、ぐ!?」
ソフィアの剣がレナの右手の甲を貫いた。
レナの顔が苦痛に歪む。
それでも、彼女は反撃に移ろうとした。
痛みに耐えつつ、剣を振ろうとするが……
カラン。
しかし、剣を握ることができず落としてしまう。
右手の甲を貫かれたことで、指に繋がる神経がいくらか断たれたのだろう。
うまく指を動かせない様子で、その場に膝をついてしまう。
そんなレナに、ソフィアは剣を突きつけた。
「終わりですね」
「くっ……」
レナは、血の流れる右手の甲を押さえつつ、ソフィアを睨みつけた。
もう剣は持てない。
戦うことはできない。
でも闘志はまったく衰えていない様子だ。
剣がないなら拳がある。脚がある。
どちらも断たれたとしたら、噛みついてでも戦ってやる。
そんな意思を感じることができた。
それだけじゃない。
魔剣が持つ力を使えば、人を捨てる代わりに、レナは大きな力を得ることができるだろう。
まだまだレナは戦うことができる。
だから僕は……
「……ねえ、レナ」
ぴくりとレナが震えた。
そっと、彼女がこちらを見る。
そんなレナに僕は……首を小さく横に振る。
「もうやめよう?」
「……」
「レナにも色々あるのわかったよ。譲れないものがあるっていうのもわかった」
「なら……」
「でもさ」
本当の想いを口にする。
「僕は、レナと争いたくないよ」
レナはひどいことをしてきたと思う。
アイシャやスノウを傷つけて、他の人にも剣を向けてきた。
でも……
「どうしても、君を嫌いになることはできないんだ」




