267話 VS・レナその1
「つまらないもの……見せないでよっ!!!」
レナは眩しいものを見るかのような目をこちらに向けて……
次いで、ギンと鋭く睨みつけてきた。
怨嗟のような声を吐き出しつつ、地面を蹴る。
転移したかと思うような脅威的な加速力。
気がつけばレナの姿が目の前にあった。
でも、慌てることはない。
「このっ!」
魔剣を流星の剣で受け止めた。
力で押し切られてしまいそうになるけど、そこは我慢。
両足に力を込めて耐える。
「フェイトから離れなさい!」
「ちっ」
ソフィアの反撃に、レナはうっとうしそうに舌打ちをした。
ただ、下手な動きをしたらやられてしまうのは理解しているんだろう。
一度離れて……
「えっ」
なにを思ったのか、レナは魔剣を投擲する。
自ら武器を手放すという、ありえない行動。
虚を突かれてしまい、一瞬、反応が遅れてしまう。
それはソフィアも同じだった。
避けることは間に合わないと判断したらしく、その場に留まる。
そして剣を振り上げて、飛来する魔剣を弾いた。
魔剣がくるくると宙を舞い……
「死ねぇえええええっ!!!」
「なぁ!?」
あらかじめそうなることを予測していたのか、レナは、ベストな位置で魔剣をキャッチ。
そのまま斬りかかってきた。
剣を投げて、弾かれて、しかしそれをキャッチする。
まるでサーカスの曲芸だ。
「山茶花!」
「破山!」
僕とレナの技が真正面から激突した。
予想外の動きに翻弄されてしまい、こちらの方が初動が遅い。
でも、技の威力はこちらが上だったらしく、刃が競り合い、拮抗状態に持ち込むことができた。
今度は逃さない!
こちらから前に出て、ひたすらに力を叩きつけてやる。
そうして撤退を許さないでいると、横からソフィアが飛び込む。
「これで!」
「うるさいっ!!!」
レナは右手一つだけで魔剣を持つ。
そして、空いた左手に忍び持っていた短剣を。
短剣でソフィアの剣を受け止めた。
名のあるものではなかったらしく、ギィンッと一撃で砕け散ってしまう。
でも、防ぐことはできた。
それで十分というかのように、レナはさらに数本の短剣を左手に持ち、投擲する。
複数相手の戦いに慣れている。
これが真王竜の力……?
「ボクはもう、我慢なんてしたくないんだから……全部、全部手に入れてやるんだ!」
現状、戦況はレナに傾いている。
こちらは二人いるのだけど……
でも、レナの力が圧倒的だ。
加えて、複数相手の戦いに慣れているため死角がない。
隙もない。
攻めあぐねている状態で、これが続くとまずい。
まずいんだけど……
ただ、レナはレナで苦しそうだ。
自分の方が優位に立っているはずなのに、その表情に余裕はない。
むしろ、とても苦しそうだ。
それは……
もしかしたら、レナの心を表しているのかもしれなかった。




