266話 二人で一つ
レナの刃が僕に迫る。
それを避けることはできない。
防ぐこともできない。
どうすることも……できない。
ギィンッ!!!
横から剣が割り込んできて、レナの刃を受け止めた。
その剣は見覚えがある。
聖剣エクスカリバー。
剣聖だけが持つことを許される剣。
そして、その主は……
「ソフィア!」
「まったく……少し目を離した隙に、とんでもないことになっています……ねっ!」
「くっ!?」
ソフィアは前に踏み込み、回転。
その威力を乗せて剣を薙ぎ払い、レナを吹き飛ばした。
とても強引な力技。
でも、だからこそ抵抗することは難しい。
ただ、レナは猫のようにしなやかに着地。
まったくダメージはない様子だった。
レナは座った目でソフィアを睨みつける。
「ボクとフェイトのデートに邪魔するなんて、野暮がすぎないかな?」
「今のがデートなのですか? だとしたら、相当に女子力が低いですね。そのようなデートでは、殿方を楽しませることはできませんよ」
「このっ……!」
苛立っている様子で、レナの視線がさらに鋭くなった。
「えっと……ソフィア? 助けてもらったことはうれしいんだけど、あまり挑発するようなことは……」
「挑発なんてしていませんが?」
「え? じゃあ、今のが素?」
「はい」
たぶん、本気で言っているのだろう。
ソフィアは、そんなに好戦的な性格じゃないけど……
レナが相手だと、無意識でスイッチが切り替わってしまうのかな?
色々な意味でライバルだから、そうなるのも仕方ないとは思うけど。
「邪魔しないでくれる?」
「イヤです」
「……」
「私はフェイトのパートナーです。この座は、あなたに譲るつもりは毛頭ありません」
「……フェイトも同じ考えなの?」
「うん」
即答した。
「レナには悪いけど……でも、ソフィアが僕のパートナーだよ。他の人は考えられない」
「……どうして」
レナがぽつりとつぶやいた。
「小さな幸せが欲しいだけなのに……がんばりたいだけなのに……なんで、なんで、なんで……」
「レナ……?」
レナは、がしがしと自分と頭をかいた。
剣を持ったままなので、時々、自分を傷つけてしまう。
それでも手は止まらない。
「どうしてどうしてどうして……なんで宗家の連中ばかり……!」
「宗家……?」
ソフィアが眉を潜めた。
そういえば……
レナが使う技、神王竜にとてもよく似ているけど、なにか関係性が?
「そっか」
ややあって、レナは動きを止めた。
とても無機質な瞳をして……
それは、なんの感情も宿していなくて……
ぽつりと言う。
「奪われるなら、先に奪っちゃえばいいんだ」
「「っ!?」」
瞬間、殺気の嵐が吹き荒れた。
質量を持つほどの圧倒的なオーラ。
気をしっかりと保っていないと、一瞬で意識を刈り取られてしまいそうだ。
「なんていう力……フェイト。ここは私がなんとかするので、フェイトは……」
「僕も一緒に戦うよ」
「フェイト!? ですが、それは……」
「僕はパートナーだからね」
「……あ……」
「だから、一緒に戦うよ」
そう。
僕達は二人で一つなんだ。
「いこう、ソフィア」
「はい!」




