264話 死闘
「くぅっ!!!?」
前に倒れ込むようにして身を低くした。
それと同時に、ほぼほぼ勘で後ろに剣を振る。
ギィンッ!
流星の剣とティルフィングが交差した。
前回は叩き折られてしまったけど、今回は無事だ。
剣の力は互角みたいで、十分に耐えている。
問題は……
僕の力が足りないこと。
「このっ!」
剣を斜めにして、刃を滑らせる。
わずかだけど余裕ができた。
その間に後方へ……
「いや、前だ!」
「へぇ」
レナの力量は、僕よりも圧倒的に上。
下手に逃げようとしたり防御に徹しようとしても無駄だ。
すぐに押し切られてしまうはず。
なら、危険を覚悟で懐に飛び込むしかない。
リスクは大きいけどリターンもある。
うまくいけば僕の攻撃も当たるかもしれない。
「はぁっ!!!」
踏み込むと同時に突きを放つ。
避けられてしまうけど、それは予想済。
下半身のバネを使い、そこから強引に剣の軌道を変える。
横へ薙ぎ払い、続けて縦に跳ね上げた。
定石にはない軌道で刃を叩き込むのだけど、
「やるね」
レナは全ての攻撃をあっさりと受け止めてみせた。
定石にない戦いなら、むしろ得意。
その程度? と言っているかのようだ。
「次はボクの番だね!」
「うぁ!?」
腹部に走る衝撃と痛み。
たぶん、蹴りを食らったんだと思う。
まったく見えなくて……
どうすることもできず、僕は後ろに吹き飛ばされてしまう。
そこにレナの追撃が襲う。
「真王竜剣術・裏之三……大蛇!」
視認できないほどの速度でレナが剣を振る。
衝撃波が生まれ、獣のように襲いかかってきた。
避けられない!
防ぐこともできない!
なら……迎え撃つ!
「神王竜剣術・壱之太刀……破山!!!」
渾身の一撃を繰り出した。
ただ、それでも衝撃波を相殺するので精一杯。
レナが突貫。
一瞬で目の前にやってきて、刃の嵐を見舞う。
ダメだ。
一撃一撃の威力が高い上に、なによりも早すぎる。
防ぐのがやっと。
反撃に転じる間を作ることができない。
「くっ……!!!」
必死に防いで。
ギリギリのところで避けて。
命の危機をヒシヒシと感じつつ、反撃の機会をうかがう。
負けられない。
間違えた感情で暴走するレナに、負けてなんていられない!
僕が負けたら……
負けたら……
大事な人が傷つくかもしれないんだ!!!
「こっ……のぉおおおおお!!!」
「えっ」
レナに隙なんてない。
それでも、あえて前に出た。
刃が左肩をえぐり、鋭い痛みが走る。
でも、こちらから前に出たせいでタイミングが狂ったらしく、そのまま切断、なんてことにはならない。
うまい具合に骨で受け止めることができた。
「神王竜剣術・参之太刀……」
「しま……!?」
「紅っ!!!」
全身全霊の一撃を至近距離で放つ。




