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263話 一人だけ

「嫌だ」


 レナの求めに対して、僕は首を横に振る。

 そんな反応は予想していたのか、レナの表情は変わらない。


「うーん、どうしてダメなのかな? ボク、自分で言うのもなんだけど、けっこうかわいいと思うよ? スタイルは……まあ、ちょっと残念かもだけど。でもでも、その分、なんでもしてあげるよ? フェイトがしたいこと、全部してあげるよ?」

「……そういう問題じゃないよ」

「?」

「なんでもしてあげるとか、そんなこと気軽に言われても……困るよ。それに、そんな一方的な関係は嫌だ。なにかをしてあげて、されて……そんな支え合う関係がいいんだ、僕は」

「なるほど」


 レナはうんうんと頷いて、


「わからないなー」


 キョトンとした顔で小首を傾げた。


「ボクのこと好きにできるんだから、それでよくない? ボクがいっぱいいっぱい尽くして、それでよくない?」

「なんで、そんな偏った考えになるのかな……」


 理想論かもしれないけど……

 恋人とか夫婦って、支え合うものだと思う。

 どちらか一方が寄りかかっていたら、すぐに壊れてしまうような気がする。


 助け合い。

 苦楽を分かち合い。

 ずっと一緒にいること。


 そんな理想を僕は叶えていきたい。

 ……ソフィアと一緒に。


「もしかしたら……ソフィアよりも先にレナに会っていたら、君に惹かれていたかもしれない」


 レナは黎明の同盟に所属しているけど……

 でも、極悪人とは思えない。

 一緒にいると楽しいと思えるかもしれない。


 でも。


「僕は、ソフィアのことが好きなんだ」

「……」

「レナは、彼女の代わりになることはできない。僕が好きなのは、ソフィア一人だけだよ」

「……そ」


 再び殺気があふれる。


 先程の比じゃない。

 今度は嵐のように激しく、ここにいるだけで意識を失ってしまいそうだ。


 たぶん……

 これがレナの本気。


「……う……」


 正直なところを言うと……怖い。


 それなりの修羅場を潜り抜けてきたつもりだったけど、甘かった。

 本気のレナと戦うということは、天災を相手にするようなもの。

 普通に考えて立ち向かえるわけがない。


 手が震えてしまう。

 足も震えてしまう。


 それでも。


「っ……!!!」


 唇を噛む。

 小さな痛みが気を引き締めてくれる。


 ここで退くわけにはいかない。

 ソフィアが狙われてしまうかもしれない。

 リコリスにアイシャ、スノウに害が及ぶかもしれない。


 それだけじゃなくて、獣人の里も危ないかもしれない。


 僕にできることなんて、たかがしれている。

 どうあがいてもレナに勝つことはできない。

 退けることもできない。


「だからといって、諦めてたまるもんか!」


 やらない後悔より、やってからの後悔がいい。


「ふーん」


 レナは面白そうに言う。

 その顔に再び笑顔が戻っているものの、殺気は消えていない。

 むしろ、さっきよりも鋭く濃厚になっていた。


「ボクの本気を前にしても怯まないんだ。やっぱり、フェイトはすごいね」

「……ありがとう」

「でも、ボクのものにならないなら、いらないや」


 ふっ、と。

 突然、レナの姿が消えた。


「死んじゃえ」


 背後からの声。

 それは死神を連想するほど冷たいものだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] レナ・・・、無邪気までに冷酷・・。
[一言] とにかく頑張れフェイト!
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