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261話 黎明の同盟の目的

「ボク達、黎明の同盟は、かつて神獣に味方をした者の末裔なんだ」


 そう語るレナは、どことなく誇らしげだ。


 裏切り者になんて与していない。

 正しい復讐の権利を持つ神獣に味方をした。


 そんな想いがあるのかもしれない。


「だから、ボク達は正しい歴史を知っているんだ。歪められて、捨てられて、葬りさられた神獣の無念を知っている。受け継がれている」

「……」

「そして……その想いは、ボク達が晴らさないといけない」


 レナは冷たい表情で、そう言う。


 抜き身の刃のようで……

 触れるもの全てを傷つけるような危うさがあって……


 でも、レナにそんな表情をさせているのは、過去の人達のせいだ。

 愚かな行いをしたせいで、黒い感情が後世に流れ着いている。


「今、人間達が築いている世界は神獣の犠牲の上に成り立つものだよね? そんなもの、許すことはできないよね? なら、一度全部壊してリセットしないと。そうすることが公平だと思わない?」

「それは……」

「かつての神獣の無念を晴らす。そして、世界を正しい方向に戻す……それが、ボク達、黎明の同盟の目的だよ」


 レナは、ちょっととぼけたところはあるものの、でも真面目な子だ。

 中途半端な理由で悪事に加担なんてしない。

 よほどの理由があるに違いない。


 そう思っていたんだけど……

 まさか、これほどの理由があったなんて。


 想像以上の事実を教えられて、すぐに言葉が出てこない。


「っていう感じかな」


 ころっと雰囲気を一変させて、レナが笑う。

 萎縮してしまっている僕を気遣い、態度を変えてくれたんだろう。


「ね、ね。フェイトもボク達の仲間になろう? ボク、フェイトと一緒に戦いたいな」

「そんなことは……」

「できない? ひどいことをした人間の味方をするの?」

「それは……」


 頭の整理が追いつかない。


 僕は……

 いったい、どうしたらいいんだろう?


「すぐに味方になれないとしても、ちょっとくらい協力してほしいな」

「協力……って?」

「あの子……スノウって言ったっけ? 神獣の生まれ変わりをちょうだい」

「え?」


 あっさりと言われてしまい、再び頭の中が真っ白になってしまう。


「あの子を素材にすれば、もっともっと強い魔剣を作ることができる。そうすれば、ボク達の復讐もやりやすくなるんだよね」

「スノウを……生贄にするつもり?」

「うん」


 ごまかすことはなく。

 ためらうこともなく。

 レナは、あっさりと頷いた。


「ボク達は強いけど、数が少ないからねー。量より質、っていう戦い方を選んでいるんだけど、まだまだ足りないんだ。だから、もっともっと強い魔剣が欲しいんだよね。神獣や獣人を素材にした魔剣なら、一級品ができるんだ」

「そのためにスノウを暴走させたり、アイシャを狙って……」

「大義の前には、ちょっとの犠牲なんて仕方ないよ」


 レナは、きっぱりと言い切ってみせた。


 ……それのおかげで、逆に僕の心が固まる。


「……大義なんてないよ」

「え?」

「僕は、まだまだ未熟だ。力は足りていないし、知らないこともたくさんある。でも、これだけは言える。レナに……黎明の同盟に大義なんてものはないよ」


 へぇ……という感じで、レナの目が細くなる。

 怒らせてしまっただろうか?


 ここでレナと敵対することは得策じゃない。

 彼女の方が力は上で、本格的な戦闘になったら、十中八九、僕は負けてしまうだろう。


 それでも。

 これだけは言わないといけないと思い、言葉を紡ぐ。


「過去の神獣が受けた仕打ちはひどいもので、復讐を考えるのは仕方ないと思うよ。でも、レナ達のやり方は間違っている」

「なんでそんなことが言えるのかな? かな?」

「些細なことと言って、誰かを殺すようなこと……絶対に認められないよ」


 普通の復讐なら、あるいは正しかったかもしれない。


 でも、レナ達は手段を選んでいない。

 無関係の人まで巻き込んでいる。

 本来は仲間であるはずの獣人や神獣も手にかけようとしている。


 全ては目的を果たすためというけど……

 仲間の無念を晴らすために仲間を殺すなんて、矛盾しているじゃないか。

 無茶苦茶な話だ。


 そもそも……


「正直言うと、世界のためとか人々のためとか、そんなだいそれた理由で戦うつもりはないよ。そんな覚悟はないし」

「なら、どうして?」

「家族のため」


 アイシャもスノウも大事な家族だ。

 その家族に危害が及ぶかもしれない。


 それなら、僕は全力で戦おう。

 例えレナ達に大義があったとしても、世界の反逆者になったとしても……最後まで、後悔することなく家族のために戦おう。


「だから……」


 僕は立ち上がる。

 そして剣を抜いて、レナに突きつけた。


「君は僕の敵だ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] フェイト、よく言った。 闘う理由はそういうことで良いと私も思う。
[気になる点] 昔の神獣の無念を晴らすために今の神獣を生け贄に魔剣を製造する……それって昔の聖剣を製造した人間たちと同じでは?
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