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257話 餌

 宴の開催まで、しばらく時間がかかるらしい。

 僕達も手伝おうとしたけど、そんなことはさせられないと断られてしまった。


 なので、時間までの間、散歩をして時間を潰すことに。


「綺麗なところだなあ」


 一人で獣人の里を歩く。

 他のみんなは、ちょっとしたことがあって別行動中だ。


「なんだろう、この植物?」


 里はたくさんの緑に囲まれていて、あちらこちらから動物達や鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 植物と他の生き物と共生している証だ。


 ただ綺麗なだけじゃなくて、活気にあふれている。

 将来、こういうところで暮らしたいな。


 ソフィアが隣にいてくれて。

 アイシャが笑っていてくれて。

 リコリスとスノウが一緒にいる。


 うん。


 そんな未来を思い描いたら、ニヤニヤしてしまいそうになった。


「やっほー」


 そんな時、

 能天気な声が響いた。


 その声の主は……


「レナ……?」

「うん、そうだよ。フェイトの運命の相手、レナだよ♪」


 どこからともなくレナが現れた。

 にっこり笑顔で、敵意は感じられない。


 今まで色々とやらかしてきたのだから、僕がいきなり斬りかかるって、考えていないのかな?


「フェイトは、問答無用で攻撃できるほど合理的じゃないでしょ?」

「え? な、なんで……?」

「わかりやすいんだもん」


 ニシシ、と笑われてしまう。


 うー……

 まいった。

 レナと一緒にいると、こちらのペースがいつも崩されちゃうんだよなあ。


「それで、今日はなんの用なの?」

「え?」

「わざわざ、こんなところでわかりやすく一人になる……ボクを誘っていたんだよね?」

「……全部、お見通しなんだ」

「大好きなフェイトのことだからね」


 それなのに、わざわざ姿を見せたということは、どうとでもできる自信があるのだろう。

 あるいは、里を巻き込むのを避けるために、こちらが争いを望んでいないことを見抜いているか……


 たぶん、両方だろうな。


「聞きたいことがあるんだ」

「今、ここで起きていること?」

「それもあるよ。あと……」

「ボク達、黎明の同盟の目的?」

「うん」


 レナは、どこか妖しい視線をこちらに送ってきた。


 艶があり、どこか色っぽくて……

 でも、それに誘われて触れてしまったら、スパッと切れてしまうかのような鋭さも持ち合わせている。


 妙な圧力を感じて目を逸らしたくなってしまうものの、それは我慢。

 じっと見つめ返した。


「いいよ」

「……え、いいの?」

「うん、いいよ」


 レナはにっこりと笑う。


「ボク、すっごく機嫌がいいんだ。だから、今はなんでも教えてあげる。あ、やっぱ今のなし。なんでもは無理だけど、大体のことは教えてあげる」

「それは願ったり叶ったりだけど……なんで機嫌がいいの?」

「フェイトのおかげだよ」

「僕?」


 不思議そうに問い返すと、レナは恍惚とした表情で語る。


「この前、ブルーアイランドでやりあった時、ボクの魔剣を傷つけたじゃん? フェイトにあんなことができるなんて、完全に予想外。まったく想像できなかったよ」

「なんか、剣が傷つけられたのにうれしそうだね」

「そりゃもう、うれしいよ! 大好きな人が、とんでもないことをしてみせた……女として、喜ぶべきところじゃない?」

「うーん」


 ちょっと違うような気もする。

 ただ、話がこじれてはいけないので、否定はしないでおいた。


「だからボク、機嫌がいいんだよねー。だから、色々と答えてあげる。この前のごほうび、っていう感じで」

「じゃあ……」

「ただし」


 レナはニヤリと笑い、指を二つ、立ててみせた。


「質問は二つまで。それ以上はダメ」

「……」

「さあ、フェイトはボクにどんな質問をする?」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] レナは・・・分かり会えるのだろうか・・?
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