表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/520

252話 早く起きた朝は

 翌日。

 いよいよ獣人の里へ向かう日が訪れた。


 少し緊張しているのか、いつもより目が早く覚めてしまう。

 時間的には、もう一眠りくらいできそうだけど……


「起きようかな」


 二度寝して寝坊したら大変なので、少し眠いけど、もう起きることにした。


「あっ! おとーさん、おはよう!」


 リビングに移動すると、アイシャとスノウがいた。

 二人共、尻尾をぶんぶんと振りつつ、抱きついてくる。


「うわっ……ととと」

「あう……おとーさん、大丈夫?」

「くぅん」

「うん、大丈夫だよ」


 尻もちをついてしまい、二人が悲しそうな顔に。

 なんてことはないというように、僕はにっこりと笑う。

 それから、二人の頭を撫でた。


「おはよう、アイシャ。スノウ」

「おはよー、おとーさん!」

「オンッ!」


 朝の挨拶をして、立ち上がる。

 それからキッチンを覗く。


「父さんと母さんは……まだ寝ているのかな?」


 早いから仕方ないか。


「そういえば、アイシャとスノウは早起きだね」

「スノウのお散歩をしていたの」

「オフゥ」


 そういえば、スノウはどことなくごきげんだ。

 朝から散歩ができてうれしいのだろう。


「そっか。アイシャは偉いね」

「わたし、えらい?」

「うん。きちんとスノウの面倒を見てて、優しくしているから。すごく良いことだと思うよ」

「えへへ、お父さんに褒められちゃった」


 アイシャの尻尾が、さらにブンブンと横に振れた。

 パシンパシンと尻尾の先がスノウに当たっているが、特に気にしていない様子だ。


 と、その時。


 クキュルルルー。


 なんともかわいらしい音が響いた。

 アイシャが眉を垂れ下げて、お腹に手をやる。


「あぅ……お腹減った」

「くぅーん」


 スノウも空腹らしく、つぶらな瞳をこちらに向ける。


「なら、すぐにごはんを作るよ。ちょっと待っててね」

「おとーさん、ごはん、作れるの?」

「うん、大丈夫。それなりに自信はあるよ」


 奴隷時代、食事当番も担当していた。

 失敗すると拳が飛んでくるため、それなりに上達したと思う。


「えっと……」


 キッチンに立ち、さっそく朝食の準備を始めた。




――――――――――




「はい、どうぞ」

「わぁ♪」

「オンッ!」


 はちみつたっぷりのパンケーキと、レモンを効かせた特製サラダ。

 それと、お腹に優しいコーンスープと牛乳。


 わりと上手くできた方だと思う。

 その証拠に……


「はむはむはむっ、あむ!」

「ガツガツガツ!」


 アイシャとスノウは夢中になってパンケーキを食べていた。

 尻尾がはち切れんばかりに振られている。


 うん。

 うまくいったみたいだ。


「おはようございます」

「おふぁよー……ふぁあああ」


 シャッキリした様子のソフィアと、まだ眠そうなリコリスがやってきた。


「あら? そのごはん……フェイトが作ったんですか?」

「うん。ソフィア達の分も用意してあるよ」

「……ありがとうございます」


 なぜかソフィアは複雑そうな顔だ。

 パンケーキ、嫌いなのかな?


「自分より料理が上手だから、女として複雑に思ってるのよ」

「あっ、こらリコリス! バラさないでください」


 ソフィアとリコリスが追いかけっこを始めて……


「おっ、朝食はフェイトが作ってくれたのか。うまそうじゃないか」

「ありがとう。お母さん、ついつい寝過ごしちゃって……」

「あーうー」


 父さん、母さん、ルーテシアもやってきた。

 ルーテシアは、パンケーキに興味津々らしく、じっと見つめている。

 よだれもちょっと垂れていた。


 とはいえ、赤ちゃんにはちみつはダメだ。

 ルーテシア用に作り直さないと。


「おはようございます」


 クローディアさんも起きてきた。


 みんなが揃い……

 あれこれと他愛のない話をして、笑顔が広がる。


「……こんな日がいつまでも続けばいいな」


 そんなことを思う、穏やかな朝だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで私の妄想の時間と感想、かなり書いてますが実は旅のお供で読んでるんです。 25日・26日は移動時間の合間などに読んでまして楽しんでました。
[一言] フェイトの奴隷時代に食事当番とは、昔のフェイトが忍ばれて浮かばれない。 ようやくソフィアと出会えて自由になったワケか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ