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251話 クローディアという獣人

「えっと……野営道具は元からあるし、水と食料も買った。予備の武器もある。虫除け、魔物除けの結界も大丈夫。あとは……あ、そうだ。お菓子とドッグフードを買っておかないと」


 買い物リストを確認しつつ、街中を歩く。


 雪に覆われた街、スノウレイク。

 十年以上離れていたため、とても懐かしい。

 こうして歩いているだけで、なんだか不思議と優しい気持ちになることができた。


「あ」

「おや?」


 ふと、クローディアさんと遭遇した。

 向こうも買い物をしていたらしく、片手に荷物袋を下げている。


「買い物ですか?」

「ええ。里にはないものをここで購入しています故」

「なるほど。離れたところにあると、そういうところは不便ですね」

「はい。ただ、あまり近くに里を作るのも……まあ、色々とありまして」


 言葉を濁すクローディアさん。

 その言葉の奥を悟り、微妙な気持ちになってしまう。


 獣人が人里離れたところで暮らしているのは、僕達、人間のせいだ。

 アイシャがそうだったように、奴隷にしたり……

 ひどいことを繰り返しているからだ。


「……ごめんなさい」

「え? どうして謝るのですか?」

「僕達人間のせいで、クローディアさん達に迷惑をかけているから……」


 そう言うと、クローディアさんは優しい顔に。


「フェイトさんは優しいのですね」

「そんなことは……」

「いいえ、優しいですよ。本気で私達のことを想い、気遣ってくれている。それは、なかなかできることではありませぬ」

「でも、ただの同情かも……」

「同情が悪いなんてこと、私は思いませんよ。相手の立場になってものを考えるということですから」

「そう言ってもらえると助かります」


 そのまま並んで話をする。

 他愛のない日常会話だけど、でも、楽しい。


 不思議な人だ。

 一緒にいると安心できるというか、落ち着くことができる。

 クローディアさんの優しい雰囲気がそうさせているのかな?


「ところで……今更の話ですが、私も買い物にご一緒しても?」

「はい、もちろんです」

「ありがとうございます。もう少し買いたいものがあって……ただ、どこに目的の店があるのかわからず、困っていたところなのです」

「なにを買いたいんですか?」

「ペット用品です」

「はい?」


 聞き間違えかな?

 そんなことを思うものの、クローディアさんは真面目な顔をして言う。


「この街に、ペット用品を扱うお店はございませんか?」

「えっと……一軒、そういう店はありますけど」

「よかった。お手数をおかけしてしまい恐縮ですが、案内していただけると幸いです」

「どうしてそんなところに……って、もしかして、スノウのため?」

「はい、もちろんです!」


 食い気味に肯定された。


「スノウ様にご不便ご迷惑をおかけするわけにはまいりません。快適な旅を。そして、里でもなに一つ問題なく過ごしていただくために、必要なものを買い揃えないといけません!」


 瞳に使命の炎をメラメラと燃やして、クローディアさんは強く語る。


 ちょっと圧倒されてしまうのだけど……

 クローディアさん獣人にとって、それだけスノウは大事な存在なんだろう。


 そんなスノウが僕達と一緒にいていいのかな?

 なんて、そんなことをチラリと考えてしまうのだけど……


「まあ、いいかな?」


 肝心のスノウがアイシャと一緒にいることを望んでいる。

 僕達にも懐いてくれている。


 なら、問題はないだろう。

 決めるのは、スノウ当人なのだから。


「でも、ペット用品でいいんですか? もっとこう、高級なものにするとか」

「……」


 クローディアさんは気まずい顔をして、


「……神獣様は、なんだかんだで犬と同じなので」


 そんな身も蓋もないことを言ってしまうのだった。




――――――――――




「ふう、こんなところですね」


 買い物を無事に終える。

 ただ、思った以上に時間がかかってしまい、空は赤くなり始めていた。


「お手伝いいただき、ありがとうございました」

「いえ、こちらこそありがとうございます。クローディアさんと色々な話ができて、うれしかったです」


 また一つ、獣人のことを知ることができた。

 少しだけど理解することができた。


 アイシャのこともあるし、もっともっと理解していきたいと思う。


 そうしていけば……

 たぶん、僕達は本当の意味でわかりあえるはずだから。


「じゃあ、帰りましょうか」

「はい」

今週、二回更新を休みます。詳細は活動報告にて。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] クローディア、ステラと雰囲気似てる気がする。 使命感に燃える所とか。腕っぷしはどうかな?
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