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250話 こっそりと

「……」


 工房に入ろうとしたソフィアだけど、中から聞こえてきた会話に思わず足を止めてしまう。


『親孝行なんて、真面目に考える必要はねえよ。どうしてもっていうのなら、孫の顔でも見せてくれれば十分だ』

『ま、孫って……』

『なんだ、その気はないのか?』

『ううん。その……い、いつかは、って思っているよ』


 そんなやりとりが聞こえてきて……


「っっっーーー!!!?」


 思わず、ソフィアは中に入るのを止めて、意味もないのに物陰に隠れてしまう。


 顔を押さえると、とても熱くなっていた。

 鏡を見たら、きっと真っ赤になっているだろう。

 耳まで赤いに違いない。


『ううん。その……い、いつかは、って思っているよ』


 フェイトの言葉が耳に焼き付いて離れない。

 そのまま脳の奥にまで染み込んでくるかのようだ。


「ふぇ、フェイトは……そ、そんな風に思っていたのですね……」


 もちろん、ソフィアもそういうことを考えなかったわけではない。

 むしろ、ちょくちょく考えていた。


 いやらしい?

 そんなことは知らない。


 自分も一人の女の子。

 年頃の乙女なのだ。

 好きな人と結ばれたい、というのは当たり前の感情。

 だから、そういうことを妄想したり想像したりしても、当たり前。

 うん、問題ない。


 そんな感じで、ソフィアは自分の感情を正当化して……

 それから、久しぶりにそういう想像やら妄想をして……

 ぼんっ、と顔を再び赤くした。


「ソフィアって、けっこうむっつりよね」

「ーーーっ!!!?」


 突然、耳元から聞こえてきた声に、ソフィアは悲鳴をあげそうになる。

 でも、気合と根性でなんとか我慢した。


 慌てて振り返ると、にんまりと笑うリコリスの姿が。


「にひひ」

「……聞いていたのですか? 見ていたのですか?」

「バッチリ」


 リコリスのニヤニヤ笑顔が止まらない。

 それを見たソフィアは……


「斬ります」

「ちょ!?」


 剣の柄に手を伸ばす。

 ただの剣ではなくて、聖剣エクスカリバーだ。


「は、はやまらないで!? こんなにかわいいリコリスちゃんを斬っちゃうなんて、人類の損失よ!? 世界が泣くわ! 泣いて大洪水が起きるわ!」

「冗談ですよ」


 ソフィアはにっこりと笑いつつ、剣の柄から手を離す。


「あ、あはは……」


 もーやだなー、ソフィアの意地悪。

 そんな感じでリコリスは笑うものの……


(ウソだ。あれ、絶対斬るつもりだったわ……)


 ソフィアの本気を感じたリコリスは、内心でガタガタと震えていた。


 ちょっと際どいネタでからかうのはやめておこう。

 そう誓うリコリスだった。


 まあ……

 忘れっぽいところがあるリコリスなので、再びやらかすかもしれないが。

 それはまた別の話だ。


「でも、そんなに恥ずかしがることないんじゃない?」

「そ、そのようなことを言われても……! だってだって、フェイトと、その……え、えっちなことをするなんて……」

「だから、別に恥ずかしいことじゃないでしょ」

「……えっちなことなのに?」

「そのえっちなことをすることで、人間も動物も子供を産むことができるんじゃない。子孫繁栄のための唯一の方法なのよ。恥ずかしがる必要はないと思うけどねー」

「むう」


 そんな簡単に割り切れないと、ソフィアは複雑な表情に。


 それから、ふと思いついた様子でリコリスに尋ねる。


「リコリスは、そういう経験はあるんですか?」

「えっ」


 一瞬の硬直。

 でも、すぐに回復して、リコリスは得意そうに胸を張る。


「ま、まーね! ミラクルかわいいリコリスちゃんなら、引く手あまただもん。ノノカと一緒にいる前は、あちらこちらの妖精から誘われて大変だったわ」

「わぁ」

「そのテクニックで、男連中はメロメロ。骨砕き! 魔性のリコリスちゃんって呼ばれていたわ!」

「すごいです!」


 完全に信じ込んでいる様子で、ソフィアは子供のように目をキラキラさせた。

 こういうことに関しては、ぽんこつになるソフィアだった。


「ぜひ、話を聞かせていただけませんか!?」

「え、ええ。いいわよ、リコリスちゃんのピンク色の話、してあげる!」

「お願いします!」


 リコリスがありもしない話を盛大に撒き散らして……

 ソフィアが真に受けて、思い込んでしまい……

 初めての日、色々とやらかすことになるのだけど、それもまた別の話だ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] また、別の話とはいえ、 未来の一つが確定した点。 [気になる点] 妖精の繁殖事情 (笑) ・・・ [一言] 長期の入院 (意識不明) 生活から 少し前に 帰還出来ました。 リハビリはきつ…
[良い点] 作者さま、妄想の時間となりました。 この話のあとにソフィアがユスティーナと会ったら・・。 ソフィア「ユス!」 ユスティーナ「な、なによソフィア?そんな急に大声で私を読んで」←ソフィアとはユ…
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