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247話 姫様

 一週間くらいが経って……

 父さんの知り合いの獣人はいつ来るのかな? と思っていた、その日。


 ようやく、待ち望んだ時がやってきた。


「フェイト、来たぞ」


 裏庭で素振りをしていると、父さんが工房から顔を出して、そう言った。

 それはつまり……


「すぐに用意する!」


 家の中へ戻り、タオルで汗を拭いた。

 顔を洗ってさっぱりとした後、私服に着替える。


 そうやって準備を終えて、急いでリビングへ。


 そして……


「姫様、よくぞご無事で……!」

「うー……?」


 感涙しつつ、アイシャに向かいひざまずく獣人の女性。

 そして、そんな女性にひたすらに困惑するアイシャ。


 そんな光景が飛び込んできて、


「……どういうこと?」


 ついつい、僕はそんなことを言うのだった。




――――――――――




「……さきほどは失礼しました」


 ややあって、女性は落ち着きを取り戻して……

 ひとまず、みんなで話をすることに。


 まずは僕達が自己紹介をして……

 そして、女性の番。


「私は、クローディア・バルネッタと申します。以後、よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 僕とソフィアは挨拶をするのだけど……


「うー……」


 アイシャは僕の後ろへ隠れて、尻尾をピーンと立てている。

 いきなりひざまずかれたせいか、とても警戒しているみたいだ。


 ただの勘だけど……

 クローディアさんは、悪い人じゃないような気がした。


 見た目は、二十歳くらいだろうか?

 でも、獣人はとても長く生きている人もいるみたいだから、実年齢はよくわからない。


 背は高く、ソフィアよりも大きい。

 手足はスラリと伸びていて、美術品みたいに綺麗だ。


 そんなクローディアさんには、猫の耳と尻尾が。

 獣人だけど、アイシャとは種族がちょっと違うのかな?


 でも、燃えるような赤髪がとても綺麗で……

 女性に対する感想じゃないんだけど、かっこいい、と思える人だった。


「エイジから聞いているかもしれませんが、私はこの店の常連でして……月に一度くらいの間隔で利用させてもらっていました」

「クローディアは武具を求めているわけじゃなくてな。包丁とか鍬とか、そういったものが欲しい、って言われてたのさ」


 父さんが、そう補足してくれた。


 なるほど。

 父さんは一流の鍛冶職人だから、そういったものを作らせたら右に出る人はいない。


 ちょっと誇らしい気分だった。


「私にはとある目的があったのですが……それが、姫様を見つける、というものでした」

「えっと……その姫様っていうのは、アイシャのこと?」

「はい、そうでございます」


 とても硬い口調だ。

 アイシャの従者……とか?


 でも、そうなると、クローディアさんが言うように、アイシャは実はやんごとなき身分だった……?


「姫様っていうのは、どういうことなのでしょうか? 私達はアイシャちゃんと長いこと一緒にいますが、過去はよく知らず……」


 アイシャと出会い、保護をして、親子になった経緯を説明した。


「そうですか! お二人が姫様を保護して……誠にありがとうございます。このクローディア、感謝の念に絶えません」

「いえ、大したことはしていませんから。それよりも、アイシャのこと、教えてくれるとうれしいです」

「はい、わかりました」


 クローディアさん曰く……


 アイシャは元々、獣人の里で暮らしていたらしい。

 普通の獣人ではなくて、特別な存在である『巫女』。

 故に、姫様と呼ばれていたらしい。


「なるほど」


 アイシャが巫女という話は、以前、ブルーアイランドで聞いた通りだ。

 あの時は可能性の話だったけど……今、それが確信に変わった。


「私達は穏やかに暮らしていたのですが……ある日、人間達が襲いかかってきたのです」

「それって……」

「もしかして……」


 僕とソフィアは顔を見合わせる。

 たぶん、同じことを考えているのだろう。


 獣人の里を襲った人間。

 それは……おそらく、黎明の同盟ではないだろうか?


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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