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244話 妹

「あー……うー?」


 僕の腕の中には、妹のルーテシアが。

 こちらに向けて手を伸ばしたりしている。


 たくさん動くから大変だ。

 落としたりしないように注意して……

 あと、ぐずったりしないように、抱き方にも気をつけて……


「うぅ……赤ちゃんって大変だ」

「ふふ、がんばってくださいね、お兄ちゃん」


 母さんは、にこにこと笑っていた。


 料理をする間、ルーテシアの面倒を見ることにしたんだけど……

 これが思っていた以上に大変だ。


 すごく儚い感じがして、絶対にミスはできないと緊張する。


「うぅ……」

「わわ!?」


 いきなりルーテシアが涙ぐむ。


 な、なんで!?

 僕、なにもしていないはずなのに。


「ダメですよー、フェイト」


 料理をしつつ、母さんがアドバイスをしてくれる。


「赤ちゃんは相手の感情に敏感ですからねー。フェイトが不安に思っていたら、赤ちゃんも不安になっちゃうの。だから、どーんと構えないとダメですよ」

「どーん、と……」


 そんなことを言われても難しい。


 なにしろ、故郷に帰ってきて、初めて妹がいると知ったんだ。

 しかも、こんなに小さい。


 どうしていいかわからなくて……

 ついつい引け腰になってしまうのも仕方ないと思う。


 って……


 そんな言い訳をしても、ルーテシアには関係ないか。

 妹を不安にさせているのは僕で……

 そして、僕はお兄ちゃんだ。

 なら、それらしくならないと。


「ルーテシア」

「うー……?」

「えっと……大丈夫。うん、大丈夫だからね」


 にっこりと笑い、軽く揺らしてみる。


 ルーテシアは目をパチパチとさせて、


「きゃっきゃっ」


 ご機嫌を取り戻してくれたみたいで、笑ってくれた。


 よかった……

 赤ん坊は泣くのが仕事と聞くけど、でも、やっぱり笑顔の方がいいよね。


「うー」


 ルーテシアは手を伸ばして……

 小さな小さな手で、僕の指を必死になって、ぎゅっと掴んだ。


「あ……」


 なんて小さい手なんだろう。

 でも、温かくて……

 こうしていると、不思議な気分になる。


 そんな僕達を見た母さんは笑顔に。


「ふふ。ルーテシアちゃんは、お兄ちゃんを好きになったみたいね」

「僕のことを……?」

「そう。ルーテシアちゃんは、好きな人に触れたがるの。私とか。パパはまだね」

「……父さん……」


 なんてかわいそうな。


 でも、それよりも……


「……ルーテシア……」

「あうー……あうっ」


 今更だけど。

 ようやくだけど。

 ルーテシアのことを妹だ、って……そう強く実感することができた。


 そして、同時に思う。


 僕は今まで、ソフィアやアイシャ。

 リコリスやスノウのために旅をして、戦ってきた。


 でも、それだけじゃない。

 この人の力になりたい、守りたい。

 そう思う人は、他にもたくさんいるんだ。


 ……ルーテシアのように。


「黎明の同盟をなんとかしなくちゃいけない理由……一つ、増えたかな」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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