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236話 恐れずに前へ

「ぬぅおおおおおっ!!!」


 ブレスを恐れることなく、ホルンさんが前に出た。

 そんなホルンさんに目標を変更して、煉獄竜が再びブレスを放つ。


 極大の炎。

 目を灼くかのような強烈な閃光。


 それでも……


「おおおおおぉっ!!!」


 ホルンさんは止まらない。


 直撃は避けた。

 しかし、わずかながらかすってしまっている。


 ホルンさんが身につけている鎧がみるみるうちに焦げて、一部は溶け始めていた。

 そんな力にさらされているホルンさんは、相当な激痛を受けているだろう。


 それでも足を止めず、煉獄竜の懐に潜り込む。


「むぅんっ!!!」


 ホルンさんは、背中に背負っていた大剣を手に取り、そのまま振り抜いた。

 己の身長ほどもある巨大な剣だ。


 その威力は破格だ。

 強靭な鱗を斬ることは敵わないが、叩き潰すことには成功した。


「これでも……くらぇえええええいっ!!!」


 ホルンさんは、再び大剣を叩き込む。

 剣としてではなくて、棍棒のように扱い、刃の腹で潰れた鱗を叩いた。


 ギィンッ! という音と、煉獄竜の悲鳴が重なる。

 さらに……


 ゴガァッ!!!


 あらかじめ刃に爆薬を仕込んでいたらしく、大剣が爆発した。


 業火と衝撃。

 そして、至近距離で撒き散らされる鉄片の嵐。

 さすがの煉獄竜も、これにはたまらない様子で、身をよじり、苦しそうにしている。


 効いている。

 でも……


「ホルンさん、大丈夫ですか!?」

「う、む……なんのこれしき」


 自爆技のようなものだ。

 ホルンさんもそこそこのダメージを負ってしまい、あちらこちらから血が流れていた。


「早く手当てを……」

「そんなヒマはない」

「で、でも……」

「今が攻め時じゃ。わかるな?」

「……わかりました」


 ホルンさんの目を見て、説得は不可能と諦めた。


 ホルンさんは殉教者のような目をしていた。

 刺し違えてでも煉獄竜を倒そうと、覚悟を決めているのだろう。


 そんなホルンさんの意思を曲げさせることはできない。

 彼の生き方……今までの想いを全て否定するようなことになるからだ。


 なら……


「援護します!」


 ホルンさんが刺し違えることのないように、全力で援護をする。

 僕にできることをする。


 それだけだ。


「フェイト、一緒にいきますよ!」

「うん!」


 最初に、ソフィアが前に出た。

 文字通り、目にも留まらぬ動きで煉獄竜を翻弄する。


 さすがの煉獄竜も、ソフィアの神速を追いきれないようだ。

 ブレスも連発できるわけじゃなくて、温存している様子で、手足や尻尾を振り回している。


 荒れ狂う嵐が意思を持ったかのようだ。

 巨大な岩が簡単に砕け、地震が連続しているかのように大地が揺れる。


 それでも、ソフィアは攻撃の手を緩めない。

 むしろ、さらに加速させていく。


 斬る、斬る、斬る、斬る、斬る……斬るっ!!!


 一撃一撃のダメージは小さいけれど、着実に煉獄竜の体力を削っていった。

 そして僕は……


「このっ!」


 ソフィアより圧倒的に手数が少ないものの、攻撃を加えていく。


 ソフィアによって傷つけられた場所に、再び斬撃を送り込む。

 あるいは、オイルの詰まった革袋を足元に放り、煉黒竜の動きを阻害する。


 悔しいけど、今の僕にできることは少ない。

 圧倒的に力が足りていない。


 でも、それで腐っても仕方ない。

 僕は、僕にできることを。

 全力で、ありとあらゆる手を使い、ソフィアとホルンさんのサポートをするだけだ。


「グァアアアアアッ!!!?」


 度重なる攻撃に音を上げるように、煉獄竜は悲鳴を響かせる。

 こころなしか動きが鈍ってきているように見えた。


 よし。

 この調子で攻撃を重ねていけば……


 そう思ったことが油断だったのかもしれない。


「フェイトっ!?」


 ソフィアの悲鳴。

 気がつけば、煉獄竜の尻尾が目の前に迫っていた。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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