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235話 目覚め

 ホルンさんはポケットから手の平サイズの宝石を取り出した。


 ぐっと握りしめて……

 そのまま砕く。


 キィンッ! という甲高い音が響いた。


「……」


 反射的に身構えるけど、なにも起きない。


 不発?


 怪訝思いつつ、さらに様子を見ると……


「……あっ」


 煉獄竜を包み込む氷が溶け始めていた。

 時間を加速しているかのように、異様な速度で氷が溶けていく。


 ほどなくして、ピシリと氷にヒビが入る。

 それは全体に広がり、砕ける寸前のガラスような姿へ。


「二人共、来るぞ」


 ホルンさんが剣を構えた。

 それにならい、僕とソフィアも剣を抜く。


 そして……


 ギィンッ!!!


 耳をつんざくような音と共に、氷が一気に砕け散る。


「オオオオオオォッ!!!!!」


 産声のように、煉獄竜が雄叫びを響かせた。

 ビリビリと空気が震えて、耳がどうにかなってしまいそうだ。


「グルルルゥ……」


 最強の竜が君臨する。


 封印から解放されたことに喜びを覚えているのだろう。

 牙の並ぶ歯を見せつけるようにして笑っている。


 封印されたことに怒りを覚えているのだろう。

 瞳を光らせて、ホルンさんを睨みつけている。


「これ、は……」


 想像以上の化け物だ。


 巨大な壁が立っているかのような圧迫感。

 死が直面したかのような危機感。

 自然と呼吸が乱れ、頭が真っ白になってしまいそうになる。


 でも。


「んっ」


 唇を噛んで、その痛みで我を取り戻す。


 ヤツの迫力に飲まれたらダメだ。


 ここで煉獄竜を倒す。

 スノウレイクを守り……

 そして、リコリスの友達の仇を討つ。

 ホルンさんの手伝いをする。


 改めてやるべきことを思い返したら、勇気と力が湧いてきた。


「いくぞ!」

「「はいっ!!」」


 まず最初に、ホルンさんが突撃した。


 この決戦のために用意された剣は、とても大きくて長い。

 まるで鉄塊だ。


 そんな剣を己の手足のように扱い、ホルンさんは、鉄塊を煉獄竜の頭に叩きつけた。


「グァッ!?」


 煉獄竜が怯み……

 その間にソフィアが突撃する。


「神王竜剣術、壱之太刀……破山っ!!!」


 最初から全力全開。

 聖剣エクスカリバーによって生み出された一撃は、怯む煉獄竜の体を切り裂いた。


「神王竜剣術、弐之太刀・疾風っ!!!」


 ソフィアが作った傷に、さらに攻撃を叩き込む。


 頑丈な竜の鱗を切り裂くような力は僕はない。

 でも、あらかじめ傷ができているのなら、追加のダメージを与えることはできる。


「ギアアアアアァッ!!!」


 煉獄竜の悲鳴。

 巨体が仰け反る。


 いける!


 そう思ったのだけど……

 でも、そうそう簡単にはいかないらしい。


「ガァアアアアアッ!!!」


 煉獄竜は怒りに瞳を燃やしつつ、ブレスを放ってきた。


 直撃したら骨も残らない。

 かすっただけでも致命傷だろう。


 追撃は諦めて、全力で回避。

 思い切り横に跳ぶ。


「あつつ!?」


 だいぶ距離をとったはずなのに、熱湯を浴びせられたかのように全身が熱い。

 なんて威力だ。

 これじゃあ迂闊に近づくことが……


「むぅんっ!」

「ホルンさん!?」


 ブレス? それがどうした。

 そんな感じで、ホルンさんが再び突撃した。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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