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230話 事後承諾

「……と、いうことになったんだけど……」


 宿へ戻り、ソフィアに事情を説明した。


「……」

「……」


 ソフィアはジト目だった。

 リコリスもジト目だった。


「?」


 アイシャはよくわかっていないらしく、小首をコテンと傾げている。

 そんなアイシャの足元で、スノウが楽しそうにじゃれついていた。


「……フェイト」

「は、はい!?」


 ソフィアが妙に怖い。

 ついつい背筋をピンと正してしまう。


 ソフィアは変わらずに僕へジト目を送り……

 ややあって、はぁとため息をこぼす。


「そういう大事なことは一人で決めないで、私達に相談してほしかったのですが……まあ、仕方ないですね。そういう話を聞いて、すぐに動いてしまうくらい、フェイトは優しいのですから」

「えっと……?」

「ま、次からはちゃんと考えなさいよ」


 よかった。

 二人は怒っていたわけじゃなくて、呆れていただけらしい。


 ……あれ?

 それはそれでダメなのかも?


「話は理解しました。煉獄竜なんてものがいるのなら、放っておくわけにはいきません。フェイトが言っていたように、なにかしらの弾みで封印が解けたら、とんでもないことになりますからね。今のうちに倒しておくべきです」

「それに、そいつがノノカの冒険を台無しにしてくれたんでしょ? なら、野放しになんてしておけないわね。ふざけたことをしてくれた礼、たっぷりしないと」


 リコリスの目は怒りに燃えていた。


 親友の仇を取ることができる。

 その想いが一気に膨れ上がっている様子だった。


「よかった」


 一人で決めてしまったことはよくないことだった。

 でも、二人は協力を約束してくれた。


 うん。

 改めて二人に感謝を。


「でもさー」


 いつもの調子に戻り、リコリスが言う。


「フェイトはどうやって戦うの? 今、剣がないじゃん」

「……あ」


 しまった。

 雪水晶の剣は、まだ修理前だった。


「出発は決まっているのですか?」

「ホルンさんは明後日、って言っていたけど……」


 絶対に間に合わない。


「そうなると、日をずらしてもらうか、代わりの剣を用意するしかありませんね」

「日をずらすのは難しいかも……」


 煉獄竜は月の満ち欠けで力が変わると言われている。

 新月になると力を失い、満月になると100パーセントの力を発揮することができる。


 そして、明後日が新月だ。


 その日を逃しても、一ヶ月待てば再び新月はやってくるけど……

 死も覚悟したホルンさんに、僕の都合で一ヶ月も待ってくれなんて、とてもじゃないけど言えない。


「仕方ありませんね。私の予備の剣を貸して……」

「いいや、それには及ばねえ!」

「父さん!?」


 いつからいたのか、父さんが部屋に入ってきた。


「友のために命を賭ける……くううう、泣かせる話じゃねえか!」

「話を聞いていたの?」

「悪いな。そんなつもりはなかったんだが、話が聞こえてきて、つい」


 父さん……僕らだからいいものの、他の人にそれをやらないでね?

 デリカシーが皆無で、下手したら訴えられるからね?


「そういうことなら、明後日までに剣の修理をしてやるよ」

「え? できるの?」

「ああ、問題はねえさ。今夜、準備をして、明日作業をする。そして、明後日の朝に仕上げをする。問題はねえ!」


 父さんは嘘を吐かない。

 そんな父さんが言うのなら、本当に可能なんだろうけど……


「リコリスとアイシャは平気なの?」


 問題は、父さん一人で全ての作業ができるわけじゃない、というところだ。

 リコリスとアイシャの協力が必須だけど、二人は……?


「ノノカの仇討ちのためなら、あたしだって、できることはなんでもやるわ」

「わたし……がんばる」


 二人はやる気たっぷりだった。


「フェイト」

「なに、父さん?」

「ただ修理するだけじゃなくて、前以上の最高の剣にしてやる。だから、お前はお前にしかできないことをやれ」

「……うん!」


 父さんの息子でよかった。

 この時、僕は心底そう思った。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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