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226話 がんばる

「あれ、アイシャ? まだ起きていたの?」


 工房にいなかったので寝ていたと思ったのだけど、違ったみたいだ。


「どうしたんですか、アイシャちゃん。もう寝る時間ですが……ひょっとして、うるさくしてしまいましたか?」

「ううん、そんなことないよ」

「では、どうして……」

「気になって、そこで話を聞いていたの」


 アイシャは扉の外を指差した。


 すぐそこにいたみたいだけど、ぜんぜん気づかなかった。

 それだけ話に集中していたのだろう。


「わたし、お手伝いできないかな?」

「え?」

「私は魔力がすごいいっぱい、って」

「あ」


 そういえば、そうだった。

 スノウレイクまで旅をして、ミスリルを手に入れて……

 色々とあったせいで忘れていたけど、アイシャの魔力量はとんでもないんだった。


 落ち着いたら、また魔法の練習をと思っていたんだけど……

 これはアリかな?


「どういうことなんだ?」


 事情を知らない父さんは不思議そうに尋ねてくる。


「えっと……」


 そんな父さんに、アイシャがすごい魔力を持っていることを教えた。


「なるほど」

「アイシャの魔力をリコリスに渡して、それでリコリスが魔力を供給する。それなら、うまくいくんじゃないかと思ったんだけど、どうかな?」

「いけるんじゃないかしら?」


 しばらく考えた後、リコリスはそんな結論を出した。


「あたしだけだと三時間が限界ってところだけど、アイシャが協力してくれるなら百人力ね。たぶん、十二時間までいけるわ。九時間必要っていうのなら、余裕で間に合うわね」

「それなら……」

「ただ、その間、アイシャも魔力を渡し続けないといけないの。それ、けっこう大変なことよ?」


 そう言われると迷ってしまう。

 すごい魔力を持っていると言われても、アイシャはまだ子供だ。

 無理なんて絶対にさせられない。


「なんとかならないのかな? えっと……父さん、途中で休憩を挟むとかは?」

「難しいな……そういう中途半端なことをしたら、それだけ完成度が落ちる。失敗する確率が上がるから、やらねえ方がいいな」

「そっか……」


 そうなると、どうすればいいんだろう?


 アイシャに無理はさせられない。

 しかし、無理をしてもらわないと、雪水晶の剣を修理することはできない。


 ジレンマだ。


「大丈夫」


 僕達の話を聞いて、アイシャは小さな両手をぎゅっと握り、強く言う。


「わたし、がんばる」

「でも……」

「おとーさんとおかーさんと……リコリスのためにがんばりたいの」

「……アイシャ……」

「それで……おとーさんとおかーさんにぎゅっとしてもらえれば、もっともっとがんばれると思うの。いい?」

「うん、もちろん」

「当たり前です」


 僕とソフィアは即答した。


 娘ががんばりたいと言う。

 そのために傍にいてほしいと言う。

 断る理由なんて欠片もない。


「えへへ……わたし、がんばるね」


 こうして、今後の方針が決定したのだけど……

 僕とソフィアはアイシャのかわいさに夢中になっていて、あまり話を聞いておらず、リコリスに呆れられてしまうのだった。




――――――――――




 父さんが雪水晶の剣を修理して、それに必要な魔力はリコリスとアイシャが用意する。


 ただ、絶対に失敗が許されない作業だ。

 父さんは問題ない。

 リコリスも……たぶん、問題はないと思う。


 気になるところはアイシャだ。

 すごい魔力を持っているといっても、まだ子供。

 長時間の作業となると集中力が途切れてしまうだろうし、途中で疲れてダウンしてしまうかもしれない。


 そうならないように全力でサポートするけど……

 サポートだけじゃなくて、成功率を上げるために、事前にトレーニングをすることになった。


 そのトレーニングというのは……

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こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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