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220話 改めて攻略を

 ホルンさんはとても強かった。


 ソフィアほどの身体能力はない。

 失礼な言い方だけど、剣の技術も彼女より下だろう。


 でも、それを補って有り余る、戦闘経験があった。


 例えば、オークと相対した時。

 長年の経験から、オークが取る行動を簡単に予測することができる。

 ホルンさんの攻撃だけが当たり、オークの攻撃が当たることはない。


 まるで未来視のようだ。


 多くの魔物の習性、行動パターンを把握しているため、戦闘を有利に進めることができる。

 これは大きなアドバンテージだ。


 それと、冒険者としての知識。

 トラップの解除や、迷宮の出口を見つける方法。

 サバイバル知識など、その他諸々。

 僕も知らないようなことをたくさん知っていて、とても勉強になる。

 これが熟練の冒険者なのか、と感動したほどだ。


「ホルンさんって、すごいですね!」


 僕は声を弾ませて、そんなことを言う。


 周囲の警戒を終えたホルンさんは、剣を鞘に戻しつつ、苦笑する。


「いやいや、儂なんて大したことないわい」

「でも、僕よりも色々なことを知ってて……僕、色々あって、それなりにものを知っていると思っていたんですけど、自惚れでした」

「なに、そう卑下することはないぞ。フェイトの知識は相当なものじゃ。儂がフェイトと同じくらいだった頃、なにも知らんかったからのう」

「でも……」

「そう落ち込むでない。なに。そこまで言うのなら、儂が持っている知識を伝授するぞ?」

「本当ですか!?」

「うむ。儂なんかの知識でよければ、ぜひ、吸収してくれい」

「はい、がんばります!」

「ふぉっふぉっふぉ、まさか、この歳で生徒ができるとはのう」


 ホルンさんが楽しそうに笑う。

 それを見て、僕も笑顔になった。




――――――――――




「ギャア!?」


 ソフィアが魔物を斬り捨てた。


 しかし、その視線は魔物を見ていない。

 少し離れたところにいるフェイトとホルンに向けられていた。


「むう……」


 二人を見るソフィアの目はジト目だ。

 顔も不機嫌そうで、どことなく子供が拗ねているように見えた。


 視線を二人に固定しつつ、周囲の魔物を斬り捨てていく。

 全自動殺戮人形のようだ。

 ここにアイシャがいたら、怯えてたいたかもしれない。


「むううう……」

「ちょっと、ソフィア」


 どこか呆れた様子でリコリスがソフィアに声をかけた。


「なんですか?」

「よそ見してたら危ないわよ。あたし達が担当している方は、まだまだ魔物がいるんだから」

「この程度、なんともありませんよ」


 なんてことを言いつつ、再びソフィアは剣を振る。

 背後から奇襲をかけようとしていた魔物が、縦に一刀両断された。


 その剣速は風のよう。

 斬られた魔物も、しばらくの間、自分が死んだことに気づいていない様子だった。


「まあ、平気かもしれないけど……なによ。そんなにあの二人が気になるの?」

「べ、別に気になるなんていうことは……」

「めっちゃ気にしてるじゃない。うけるー」


 ケラケラと笑うと、


「あら、こんなところにも魔物が?」

「あたしは妖精です!? かわいいかわいい美少女妖精リコリスちゃんですぅ!?」


 ソフィアに脅されて、慌ててリコリスは降伏した。


 でも、それで懲りないのがリコリスだ。


「で、なんであの二人を見てるわけ?」

「……気になるじゃないですか」

「なにが?」

「私以外で、あんなにもフェイトが親しそうにするなんて……」


 要するに、ソフィアはホルンに嫉妬していたのだ。

 リコリスが呆れのため息をこぼす。


「あのね……あれは親しいとかそういう感じじゃなくて、憧れでしょ? 憧れ。好きとかそういうものじゃないから、気にする必要ないじゃん」

「それは理解しているのですが、しかし、それでも気になってしまうのです!」

「恋する乙女だから?」

「はい!」

「厄介ねー」


 リコリスは半分呆れて、しかし、半分は微笑ましく思う。


 恋愛。

 自分達妖精には、よくわからない感情だ。


 故に、ソフィアのように固執することはないものの……

 傍から見ている分は楽しく、興味深い。

 機会があれば自分もしてみたいなー、なんて思う。


「ま、安心なさい。あれはただの憧れで、そのままついていっちゃう、なんてことはないし」

「そうですね……ですが、それはそれで萌える展開で悩ましいです」

「え?」

「え?」


 しばしの沈黙。


「……ほら、さっさと魔物を倒しちゃいましょ」


 リコリスは聞かなかったことにした。


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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