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219話 役不足

「その後、儂はノノカ嬢と一緒に世界を旅したのじゃが……」


 さらに話が続こうとした時、魔物の雄叫びが聞こえてきた。


 慌てて振り返ると、複数の魔物の姿が。


「この階の魔物は掃討したと思っていたのですが」

「それなりに時間が経っているから、新しく湧いてきたのかもしれないね」

「じいちゃんの昔話はめっちゃ気になるんだけど、まずは、あっちの対処ね。さあ、フェイト、ソフィア、いきなさい!」

「どうしてリコリスが命令をしているんですか?」

「あいだだだだだ!!!?」


 ソフィアに頭をギシギシと押さえられて、リコリスが悲鳴をあげた。

 二人共、余裕があるなあ。


「ふむ、全部で八体か。儂が三体、引き受けよう。二人には残りを頼んでもいいかのう?」

「はい、大丈夫です」

「うむ、頼もしい返事じゃ」


 それぞれ抜剣。

 そして、突撃。


 魔物に先制攻撃のチャンスは与えない。

 むしろ、こちらから攻撃することで、タイミングを乱してやる。


「はぁ!」


 さすがというか、ソフィアはもう一匹を斬り捨てていた。

 相手は金属でできた棒を武器にしていたが、その棒ごと叩き切ってしまう。


「せいっ!」


 ホルンさんもすごい。

 老齢とは思えない機敏な動きで魔物を惑わして、死角からの攻撃を叩き込んでいく。

 ソフィアのような一撃必殺の威力はない。

 ただ、堅実で確実な戦い方だ。


 結果、ホルンさんは魔物の攻撃を一撃も食らうことなく、倒すことができた。


 なるほど。

 ああいう戦い方もあるんだ。

 すごく参考になる。


「フェイト、来たわよ!」

「うん!」


 僕も負けていられない。

 木の棍棒を武器に、殴りかかってくるオークと対峙した。




――――――――――




 戦闘は五分ほどで終了した。

 僕達の圧勝だ。


 というけど……


 ソフィアがいるし、ホルンさんもすごい。

 二人のおかげだよね。


「フェイト、怪我はありませんか?」


 剣を鞘に収めつつ、ソフィアがそう尋ねてきた。

 僕も剣を収めて、頷いてみせる。


「うん、大丈夫だよ。ソフィアは?」

「私も問題ありません。ホルンさんも問題ないようですし……」

「ふぉっふぉっふぉ、まだまだ若い者には負けんぞ」

「なにも問題ありませんね」

「ちょっとちょっと。なんで、リコリスちゃんにはなにも聞かないわけ?」

「リコリスは天井の辺りを飛んでいたから、なにも問題はありませんよね?」

「そんなことないわよ! 蜘蛛の巣に引っかかって、めっちゃピンチだったわよ!」


 蜘蛛に食べられそうになる妖精って、いったい……


「ふむ。ひとまず魔物は掃討したが……この様子では、また現れるかもしれぬな」

「落ち着いて話を、というわけにはいきませんね」


 僕達もホルンさんも、まだまだ色々なことを話したい。

 しかし、状況がそれを許してくれない。


 まあ、ダンジョンの中で落ち着いて話をする、っていうのが、そもそも無理な話なんだけど。


 休むために結界などを展開しても、それでも見張りは必須だ。

 なにがあるかわからない。

 絶対に安全といえないのがダンジョンなのだから。


「提案なのじゃが……協力してダンジョンを攻略せぬか? その後、街へ戻り落ち着いて話をしようではないか」

「そうですね。ソフィアも、それでいいよね?」

「はい、問題ありませんよ。ホルンさんのような方が一緒だと、とても心強いです」

「ふぉっふぉっふぉ、老人をおだてるのがうまいのう」

「いえいえ、本心ですよ」

「……」


 ホルンさんはとても頼りになる。

 強いだけじゃなくて、たぶん、知識も豊富だと思う。


 でも、ソフィアがそんな風に褒めるところを見ていると……


「ふふ……どうしたのですか、フェイト?」

「えっ」


 気がつけば、ソフィアの顔がすぐ近くにあった。

 少し頬を染めて、ニヤニヤと笑みを浮かべている。


「なにやら、あまりおもしろくなさそうな顔をしていましたが?」

「そ、それは別に……なんでもないよ」

「そうですか? 私は、嫉妬しているように見えたのですが」

「っ……!? そ、そそそ、そんなことは……」

「ふふ、フェイトはかわいいですね」

「むぎゅ!?」


 思い切り抱きしめられてしまう。

 そんなことをしたら、柔らかくて温かい二つの膨らみが……!?


「ふふ、フェイト♪」

「むぐぐー!?」


 僕は慌てて、


「「やれやれ」」


 リコリスとホルンさんが、生暖かい目をしてため息をこぼすのが見えた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 フェイトとアルトとレインが揃ったら・・パート2 アルト「僕はユスティーナと結婚したんだけど、二人は?」 フェイト「ぼ、僕もソフィアとは・・そ、その・・」 …
[気になる点] 思い切り抱きしめられてしまう。 そんなことをしたら、柔らかくて温かい二つの膨らみが……!?「ふふ、フェイト♪」 「むぐぐー!?」 >>ある作品サイド ○ル○『○ニ○ちゃん。○ニ○ち…
[気になる点] クモの巣に引っ掛かっても リコリスなら魔法で何とかならなかったんだろうか?w [一言] ソフィアもヤキモチ焼き フェイトもヤキモチ焼き バカップルは今日も平常運転
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