表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/520

22話 VSフェンリルっぽいもの

「はぁっ!」


 恐怖を感じるような相手ではないけれど、この巨体は厄介だ。

 まずは様子を見るための一撃を叩き込む。


 ギィンッ!


 鉄の塊を叩いたかのように、剣が弾かれてしまう。


「コイツ……硬い!?」


 毛の一本一本が鋼でできているかのようだ。

 フェンリルの特徴とそっくりなのだけど……


「でも……うーん、違うよな」


 コイツがフェンリルだとしたら、Sランクの魔物。

 相当な恐怖を覚えるはずなのだけど……

 大したことはない。

 体が震えることはないし、いつも通りに過ごすことができる。

 故に、どうしてもSランクの魔物とは思えない。


「って、コイツの正体はどうでもいいや。今は、なんとかしないと!」


 コイツと戦っている時に、本命のフェンリルが現れたりしたら、かなり厄介なことになる。

 なるべく早く、コイツを倒さないと。


 大丈夫。

 コイツは怖くない。

 だから、僕なんかでも倒せるはずだ。

 これだけの巨体でもなんとかなるはずだ。


「ガァッ!!!」


 魔物が吠えて、丸太のような前足を叩きつけてきた。

 剣を盾のようにして受け止める。


「ガッ!?」


 受け止められるとは思っていなかったらしく、魔物が動揺したような声をこぼす。


 視界を全て塞ぐような攻撃は圧巻なのだけど、でも、力が足りていない。

 多少の重さは感じたものの、しっかりと耐えることができる。


 うん。

 やっぱりこの魔物、見掛け倒しだ。

 やはり、見た目で相手を威圧して怯んだところを一気にやる……というような、特殊な生態を持つ魔物なのだろう。


 元奴隷の僕ではあるけれど、中身のないヤツに負けるほど、落ちぶれてはいないつもりだ。


「グルァッ、ガァアアア!!!」

「とはいえ、どうしたものか……」

「ガッ、ガァ……!?」


 魔物は前足を乱打するものの、僕は全て受け止めて、耐えてみせた。

 思わずという感じで動揺する魔物。

 一方の僕は、ガードの体勢のまま考える。


 この魔物、やたらと硬い。

 生存本能に特化して、そのように進化したのかもしれない。


 ソフィアに教わった剣技なら、断ち切れるかもしれないのだけど……

 今の僕では、きちんと集中しないとダメなので、時間がかかる。

 その間に魔物が攻撃をして、邪魔をされて……たぶん、うまく発動できないだろう。


「ガアアアアアッ!」

「おっと」


 魔物がさらに力を入れてきた。

 まだ耐えられるけど、いい加減、重い。


「考え事をしているんだから、どいてくれるかな?」

「グアッ!?」


 魔物の前足を押し返して、そのまま、さらに吹き飛ばす。

 巨体が人形のように転がり、木々を薙ぎ倒しつつ、地面に転がる。


「グ、グァ……?」


 なにが起きた?

 というような感じで、魔物が目を白黒させていた。


 吹き飛ばされたことが信じられないみたいだけど……

 キミ、軽いよ?

 ソフィアと一度だけ模擬戦をしたことがあるけれど、その経験を考えると、彼女の方が圧倒的に重い。

 それに比べて、この魔物は、身も心も魂もなにもかもが軽い。


 あ、いや。

 今の言い方だと、ソフィアの体重が重いと勘違いされそうだ。

 ものすごく怒りそう。

 心に秘めておくことにして、絶対に口にしないようにしないと。


「というか……チャンス!」

「グア!?」


 魔物は尻もちをつくような形で、腹部をさらけ出していた。

 この機会、逃す手はない。


 突撃。


 剣を腰だめに構えて、槍のように突き出す。


「グギャアアアアアッ!?」


 刃が魔物の腹部に突き刺さる。

 どうやら、腹部は柔らかいらしい。


「なら!」


 突き刺したまま剣を横に薙いで、さらに縦に叩き落とす。

 さらなる傷をつけられて、魔物がのたうち回る。


「おっと」


 暴れ回る魔物に巻き込まれないように、一度、後ろへ引いた。

 魔物は痛みに悶えていて、こちらのことをまるで気にしていない。

 気にする余裕がない。


 これならば。


「神王竜剣術・壱之型……」

「ガァアアアッ!!!」


 こちらが攻撃をしようとしていることを察して、魔物が我に返り、怪我を気にせず突撃してきた。

 凶悪な牙で噛みつこうとするが、それよりも僕の方が速い。


 スゥ……と息を吸い、意識を集中。

 剣と体と心を一つにして、唯一、僕が使える技を放つ。


「破山!!!」


 剣を上から下に叩き下ろす。

 刃の鋭さで斬るのではなくて、圧力で強引に断ち切る。


 そんな方法で、魔物の頭部を両断した。


「ふぅ」


 無事に討伐完了。


 でも、これで安心してはいけない。

 本命のフェンリルは、まだどこかにいるはずなのだから。

 砦に向かう前に、すぐに探しに行かないと。


「フェイト!!!」


 聞き慣れた声。

 振り返ると、慌てた様子のソフィアが。


「フェイト、大丈夫ですか!? フェンリルがもう一匹いると聞いて、それをフェイトが足止めするために……って、その魔物……死体? 死んでいるのですか? これは、あなたが……?」

「うん、そうだよ。フェンリルを探している最中に、偶然、出会ったんだ。コイツも砦に向かったら厄介だと思って、倒しておいたよ。これくらいの魔物なら、僕でもなんとかなるからね。あ、それよりも、早くフェンリルを探しに行かないと」

「……そこで死んでいる魔物が、フェンリルの雄なのですが」

「え?」

当初は30話くらいで終わりにするつもりでしたが、幸いにもたくさんの応援をいただくことができました。

なので、もうしばらくがんばりたいと思います。

それに伴い、更新を、月曜・水曜・金曜の12時、週三回にしようと思います。

これからもお付き合いいただけるとうれしいです。

よろしくお願いします。


『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマークや☆評価をしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 神王竜剣術の技名 型と太刀の2つでてきてますけど 書き間違えですか? それとも違う技なのですか?
[一言] 面白いです! まだまだ読みたいです(*゜▽゜*)
[一言] とても面白いので、まだまだ続きが読みたいです! ですが、お身体に気を付けて頑張ってください!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ