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216話 いざ攻略開始

 翌日。

 家族で朝食を食べて……

 そして、準備を整えた後、僕達はダンジョンへ移動した。


 父さんの言うダンジョンは、村から一時間ほどのところにあった。


 比較的損傷の少ない遺跡。

 その一角にダンジョンの入り口がある。


「地下に潜るのではなくて、塔を登るのですね」


 雲を貫くような大きな塔が見えた。

 縦に長いだけじゃなくて、横も広い。

 ちょっとした城に見えるくらいだ。


「ふーん、珍しいダンジョンね。これ、かなり昔のものよ」

「わかるの?」

「あたしを誰だと思っているの? 超絶天才ミラクルマジカル妖精リコリスにょ!」


 噛んでしまったので、色々と台無しだ。


 ちなみに、アイシャとスノウはいない。

 旅の最中ならともかく、今は実家がすぐ近くにある。

 できるだけ危険からは遠ざけたいので、父さんと母さんに預かってもらっていた。


 アイシャが巫女かもしれなくて、それで狙われるという可能性もなくはないのだけど……

 父さんはそこら辺の冒険者よりも、よっぽど強い。

 安心して二人を任せることができる。


「おじさまにいただいた情報によると、五階層みたいですね。ただ、一つ一つの階が広く、目的のミスリルがどこにあるかわからない……厄介ですね」

「最悪、塔の端から端まで歩き回らないといけないね」


 塔はかなり広そうだ。

 全部を踏破するとなると、一週間くらいかかってしまうかもしれない。


 そうなる前にミスリルを見つけたいところだけど……

 こればかりは運だよりになってしまう。


「安心しなさい。このミラクルワンダーラッキガール、リコリスちゃんがいれば、ミスリルなんてすぐに見つかるわ」

「あはは、期待しているよ」

「ふふん、任せなさい! じゃあ、いくわよ!」


 リコリスが意気込んで塔の扉を開けて、


「グルァアアアアアッ!!!」

「ぎゃああああああ!!!?」


 いきなり獣型の魔物が飛び出してきて、リコリスが涙目で悲鳴をあげた。


「あぶ……」

「危ないですね」


 慌てて前に出ようとしたけれど、それよりも先にソフィアが動いた。


 その手は剣の柄に伸びていて……

 チン、という音を立てて、剣を鞘に収める。


 すでに抜剣した後だった。

 魔物は縦に両断されて、そのまま絶命する。


「びびったー……マジでびびったー……いやいやいや、いきなり襲われるとか、考えないわよ! なんなのよ、これ! むかつく!!!」


 恐怖が怒りに変換されたらしく、リコリスは憂さ晴らしとばかりに、塔の壁を蹴りつけていた。


「ソフィアはすごいね。僕だったら間に合わなかったよ」

「いえ、フェイトも十分に動けていたと思いますよ。私の場合は、こうなることをある程度予測していたので、それで先に対処できたのです」

「もしかして、扉越しに魔物の気配を感じていたの?」


 たぶん、あの魔物は扉の近くで獲物を待ち構えていたのだろう。

 そして、中に入ってくる人を不意打ちで倒す。


「いいえ、そういうわけではありません」

「なら、どうして……?」

「リコリスが調子に乗る時は、まあ、こういうことがよくあるので」

「なるほど」

「そこ! なんで納得するのよ! おかしいでしょ!?」


 だって、リコリスだから。


 その一言でなんでも解決してしまいそうだった。


 とにかくも攻略を開始した。

 ソフィアと肩を並べるようにして、前に進む。

 リコリスは少し後ろを、ふわふわと浮いてついてきていた。


「グァ!?」

「ギャオオオン!?」

「ガッ……」


 長年放置されていたらしく、魔物が大繁殖していた。

 十メートルも進まないうちに、あちらこちらから襲ってくるのだけど、その全てを撃退する。


 ソフィアが八割、僕が二割くらいだろうか?


 僕の方が圧倒的に少ない……と、落ち込むことはない。

 以前なら一割も倒すことはできなかっただろう。

 それが、今では二割に届くことができた。


 うん。

 少しずつかもしれないけど、僕もきちんと成長している。

 そのことを実感することができてうれしい。


「それにしても……」


 ソフィアはダンスを踊るようにしつつ、魔物の相手をする。

 一撃も食らうことなく、逆に致命傷だけを叩き込んでいく。


 その顔は、ちょっとうんざりとした様子だ。


「数が多すぎませんか?」

「そうだよね……ちょっとおかしいかも」


 魔物も動物と同じように繁殖する。

 だから、放置すれば数が増えるのはわかるけど……


 でも、エサをどうしていたのか? という疑問が残る。


 魔物も食べないと生きていけない。

 これだけの数を養うエサなんて、どこから手に入れたのだろう?

 村が襲われたという話は聞いてないし……うーん?


 不思議に思いつつ、とにかく魔物を倒して、掃討した。

 けっこう時間がかかってしまったけど、一階の魔物はだいたい倒しただろう。


「これで終わりかな?」

「少し待ってください」


 ソフィアが目を閉じて集中した。

 ややあって、明るい表情を見せる。


「ほぼほぼ邪悪な気配は消えましたね。多少は残っているかもしれませんが、ほぼ、この階の掃討は完了したと考えていいでしょう」

「よかった。それじゃあ、まずは一階から探索を始めようか」

「ソッコーでミスリルが見つかってくれるとうれしいんだけど。かわいいかよわいリコリスちゃん的に、ダンジョンの中で寝泊まりなんてイヤだもの」

「いいから行きますよ」

「ふぎゃ!?」


 ソフィアに鷲掴みにされて、リコリスが連れて行かれる。


 最近、リコリスの扱いがさらに雑になってきたような……?

 でも、リコリスだから仕方ないよね。


 そんなことを思いつつ探索を続けて……

 僕は、それを見つけた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンクエスト4の塔のダンジョンは全て同じ音楽なのでそれがこの話で脳内再生したんですよね。
[良い点] 塔の話を聞いてドラゴンクエスト4の塔の音楽が頭によぎりましたね。
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