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215話 嫉妬

 僕と父さん。

 リコリスとアイシャ。

 ソフィアとミント。


 二階にあるリビングで六人で賑やかに話をしていると、表の扉が開く音が聞こえてきた。

 それから、トントントンと軽快に階段を上がる音。


「ただいま……あら?」


 姿を見せたのは母さんだった。

 背中にルーテシア。

 そして、両手に買い物袋。


 たぶん、買い物に行っていたんだろうけど……


「母さん、持つよ」

「あらあら、大丈夫よ。私、まだまだ若いもの」

「それは、まあ、否定できないんだけど……」


 ともすれば、僕よりも年下に見える母さんだ。

 父さんと一緒にいると、たまに、父さんが不審者に間違われてしまうほどだ。


 それでも母親は母親。


「体力は僕の方があるんだから。子連れで買い物なんてしなくても、一声かけてくれれば、荷物持ちくらいはできるんだから、無理はしないでよ」

「ふふ、心配してくれてありがとう。でも、これくらい無理じゃないわよ? フェイトちゃんが生まれた頃は、それこそ、毎日おんぶしながら家事とお父さんのお仕事のお手伝いを……」

「そういう話はいいから、ほら」


 やや強引に荷物を取り、キッチンへ持っていく。

 それぞれの場所に荷物を置いて、それからリビングへ戻る。


「よしよし、いい子ですねー」

「はーい、じっとしててねー」


 ソフィアとミントが、ルーテシアと遊んでいた。


 ルーテシアはまだ歩けないらしく、はいはいをして床の上を移動している。

 ソフィアとミントは、そんなルーテシアを見てだらしのない笑顔を浮かべていた。


 いや、うん。

 かわいいとは思うけど……

 でも、孫をかわいがるおばあちゃんのようになっているよ?


 ……とは言わない方がいいのだろう。

 そう思いつつも、僕は黙っておいた。


「フェイトちゃんは、どうしたの? 確か、ダンジョンの攻略をするのよねー」

「そうだけど、父さんが、今日は家でゆっくりしていけ、って」

「あらー、それは賛成ね。お母さん、フェイトちゃんと色々お話をしたかったから」

「それは……うん、僕も」


 ちょっとした照れくささというか、恥ずかしさはあるのだけど……

 久しぶりに両親と再会することができた。

 話したいことはたくさんだ。


「……」


 ふと、アイシャの様子がおかしいことに気がついた。

 ルーテシアと遊ぶソフィアとミントを見て、むすっとした顔をしている。


 もしかして……


「アイシャ」

「?」

「こっちにおいで。母さんと一緒に、おしゃべりをしよう?」

「うん!」


 ぱぁっと顔を明るくして、アイシャはタタタと駆け寄ってきた。

 そして、椅子ではなくて僕の膝の上に座る。

 さらに顔をすりすりと寄せて甘えてきた。


 こんな行動をとるということは、たぶん、ルーテシアに嫉妬していたのだろう。

 ソフィアがルーテシアばかりに構うからだ。


 でも、それはそれで仕方のないことだし……

 こういう嫉妬もよくあることと聞いている。

 だから、僕がうまいことフォローしないと。


 母さんもそれを察したらしく、アイシャに笑顔で話しかける。


「ねえ、アイシャちゃん。アイシャちゃんは、なにか好きな食べ物はある?」

「好きな……食べ物?」

「私、料理が得意なのよ。今日のごはんは、アイシャちゃんの好きなものを作ってあげる」

「ホント!?」

「うん、本当」

「わぁ」


 アイシャの目がキラキラと輝いた。


「あのー……あたしの好きな料理を作ってもらうことは……?」


 ちゃっかりとリコリスも割り込んでいた。


「ふふ、いいわ。リコリスちゃんの好きな料理も作ってあげる」

「やっふぅー!」

「やほー!」


 リコリス、うれしいのはわかるけど、変な喜び方をしないように。

 ほら、アイシャが真似をした。


「アイシャちゃんはなにが好き?」

「えっと、えっと……お肉!」

「お肉ね、ふふ、了解。じゃあ、今日はハンバーグにしましょうか」

「はんばーぐ?」

「あら、ハンバーグを知らないの? ハンバーグっていうのは……」


 楽しく、穏やかな時間が過ぎていった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 リコリスの友人の魂がもしフェイトたちを見守ってたら・・ 「リコリス・・貴方、周りにかまわずはっちゃけちゃって・・、フェイトさんとソフィアさん、リコリスがい…
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