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213話 久しぶりの故郷は

 さっそく、ダンジョンの攻略を開始しようとしたのだけど、それはソフィアに止められた。


 準備をしないといけない。

 情報収集もしないといけない。

 いきなり突撃するなんて無謀の極み……と。


 そこで、二手に別れて行動することに。

 僕とリコリスは、ダンジョン攻略のための準備を。

 ソフィアとアイシャとスノウは、情報収集を。


「やーだー、フェイトと二人きりー? えー、困るー。リコリスちゃん、勘違いされたら困るー。ファンの人が泣いちゃうー」

「……」

「いや、冗談でしょ? そんな冷めた目で見ないでよ。あたし、ちょっと泣くわよ?」


 だったら妙なことをしないでほしい。


 ここは僕の故郷だから、幼い頃からの知り合いがたくさんいる。

 それなのにリコリスのせいで、変な風評被害がついてしまうかもしれない。

 勘弁してほしい。


「それで、なにを買うの?」

「ダンジョンはけっこう広いみたいだから、まずは食料と水。それと、休憩場所を確保するための結界と、ポーションも必須だよね。あとは……」

「おいおいおい!?」


 必要なものを考えていると、それを遮るような大きな声が響いた。


 振り返ると、僕と同じくらいの男性が店に立っている。

 こちらを見て驚いている様子で、あたふたとしていた。


 なんだろう?

 どこか見覚えがあるような……


「お前、もしかしてフェイトか!?」

「そうですけど……」

「おいおい、なに他人行儀な感じ作ってるんだよ。ったく、俺の顔を忘れたのか?」

「……あっ」


 思い出した。


「もしかして……」

「おう!」

「小さい頃、何度もおやつを勝手に食べて、毎日のように怒られていたタイズ!?」

「そんなピンポイントなところ、覚えてるんじゃねえよ!?」


 久しぶりに再会した幼馴染は怒るのだけど、でも、僕は喜んでいた。


 懐かしい。

 奴隷に堕ちた時は、もう二度と会えないと思っていたから……

 なおさら懐かしいと思う。


「え、なになに? 今、フェイトって言った?」

「あっ、本当だ! フェイトだ!」

「わー、すっごい懐かしいわね。おかえりなさい!」


 どこからともなく、たくさんの懐かしい顔がやってきた。

 ラン、レイド、フェリシア……その他、たくさん。


 昔、一緒に遊んだ友達で……

 近所のお兄さんお姉さん的な人もいて……

 たくさんお世話になった、おじさんおばさんもいた。


 みんな、とてもうれしそうにしている。

 その笑顔は僕の記憶にあるものとまったく変わらなくて……


「……ただいま!」


 ついつい、ちょっと泣いてしまう僕だった。




――――――――――




 懐かしい再会を済ませて、それから買い物をしたのだけど……


「うぅー……ぐすっ、ひっく、よがっだわねえええ……」


 リコリスがもらい泣きしていた。

 僕以上に泣いているんだけど……


 適当な性格に見えて、その実、けっこう涙もろいんだよね。


「ほら、もう泣き止んで」

「うぅ……」

「そんな顔をして戻ったら、ソフィア達に何事かと思われるよ?」

「それはわかっているけどぉ、でもでもぉ……」


 苦笑してしまう。


 でも、それだけじゃなくて温かい気持ちになる。

 これだけ泣いてくれるっていうことは、僕の気持ちに寄り添ってくれている、っていう証なわけで……


 うん。

 素直にうれしい。


「あっ、フェイトだぁ」」


 ふと、飛んできた声。

 それはとても懐かしくて、ついつい、また涙が出てしまいそうになるほどで……


「……ミント?」


 振り返ると、ふんわりとした笑顔を浮かべた女の子が。


 背は低く童顔。

 そのせいか、同い年のはずなのに二つ三つくらい下に見える。

 でも、本当はとてもしっかりした子ということを僕は知っている。


 ミント・フラウラウ。

 ソフィアと同じ、もう一人の幼馴染だ。


「わー、わー。本当にフェイトだぁ、帰ってきたってみんなが話していたんだけど、本当だったんだねぇ」

「久しぶり、ミント」

「うん、久しぶりぃ」


 相変わらずというか、ゆるっとふわっとした話し方をする子だ。

 そこは今も変わらないらしく、ほんわりとしている。


「なにをしているのぉ?」

「ダンジョンに潜る予定だから、そのための準備をしているんだ」

「わぁー。ダンジョンっていうことは、フェイト、冒険者になれたんだねぇ。おめでとぉ」

「うん、ありがとう」


 久しぶりの再会を喜んでいると、


「……ちょっと、フェイト」


 そっと、リコリスが耳打ちしてきた。


「なに?」

「どういう関係か知らないけど、あまりそいつと話さない方がいいわよ。早く切り上げなさい」

「久しぶりに再会したのに、そんなことをするなんて……」

「あたしの命令よ! っていうか、そうしないと、あたしまでとばっちりを食う可能性が……」

「とばっちり?」


 よくわからなくて首を傾げていると、


「……フェイト?」

「っ!?」


 びくりと震えてしまう。

 そっと振り返ると……


「確か、色々な買い物をお願いしたと思うのですが……そちらの方は誰でしょうか?」


 にっこり笑顔のソフィアがいた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] うーん、レナの下り、今度はここにも?
[良い点] 時々、私感想欄に妄想シリーズ書いてますけど、作者さん楽しんでもらってますかね?
[良い点] リコリスがすっかり(?)通常運転になったとこ ソフィアはフェイトに女性が近付くと 探知できるスキルがあるのかな?w [一言] フェイトよ、ソフィアを大切に
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