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209話 親子の再会

「えっと……」


 突然すぎる再会。

 そして、本当に久しぶりの再会。


 家に戻ったら色々なことを話そうと思っていたのだけど、でも、それらの言葉はぽーんと頭の外に飛び出してしまう。

 なにを言えばいいかわからなくて、口を開け閉めしてしまう。


「久しぶりだな、フェイト!」

「わわわっ」


 ガシガシと頭を乱暴に撫でられた。


 髪が乱れる!?

 というか、ちょっと痛い!?


「と、父さん……!?」

「おいおい、なに逃げようとしてるんだよ。久しぶりの再会なんだから、頭くらい撫でさせろや」

「そ、そう言われても、ちょっと力が強いというか……いたたたっ」

「おいおい、これくらいで痛いのか? まったく、相変わらずもやしっ子なんだな。そんなんじゃ冒険者になれねーぞ」

「そ、そんなことないから! 僕はもう冒険者だから!」

「はっはっは、冗談の腕は増したようだな」


 信じてもらえない……

 がくりと肩を落としてしまう。


「フェイトは立派な冒険者ですよ」


 にっこりと笑いつつ、ソフィアが間に入る。


「おや? 嬢ちゃんは……」

「お久しぶりです、エイジさん。ソフィア・アスカルトです。覚えているでしょうか?」

「お……おーっ! ソフィア嬢ちゃんか! もちろん覚えているぜ。まさか、こんな美人に育っているなんてな」


 僕からソフィアに興味が移ったらしい。

 父さんは今まで以上の笑顔で、ソフィアの肩をバシバシと叩く。


 女の子にする挨拶じゃない。

 でも、ソフィアはなにも気にしていない様子で、にこにこと笑っていた。


「どうして、ソフィア嬢ちゃんが一緒に……ああ、そうか。お前ら、結婚したのか?」

「「えっ」」

「なんで驚くんだ? 一緒にいた頃、すごく仲良くしていたじゃねえか。俺は確信したね。俺とアミラのように、お似合いの夫婦になるってな」

「「……」」


 ものすごく恥ずかしくなって、顔が熱くなる。


 そういう風に見られて、そういう風に言われることはうれしいけど……

 でも、まだ結婚はしていないわけで……

 あと、恥ずかしさが先行するわけで……


「おっ? そういや、そこのちびっこコンビはどうしたんだ?」

「あう」


 アイシャは人見知りをして、僕の後ろに隠れてしまう。

 スノウも同じように、僕の後ろに隠れてしまう。


「えっと……」

「おとーさん、この人、だれ?」


 説明をしようとしたところで、アイシャが僕のことを「おとーさん」と呼んでしまう。


 まずい。

 ややこしい事態に……


「俺は、エイジ。フェイトの親父だな」


 ややこしい事態にならず、父さんはしゃがみ、アイシャと目線を合わせて言う。


「つまり、おじいちゃんになる、っていうわけだ」

「おじーちゃん? おとーさんの方のおじーちゃん?」

「おう」

「おじーちゃん!」

「オンッ!」


 その一言で気を許したらしく、アイシャとスノウは父さんに抱きついた。

 父さんはしっかりと二人を受け止めて、それぞれ頭を撫でる。


 その際、ちらりと獣人の尻尾に視線がいったものの、なにか口にすることはない。


 僕らの事情はなにもわからないだろう。

 でも、深く聞くのは後回し。

 今はアイシャとスノウを可愛がることを優先した、という感じだった。


「……こう言ってはなんですが、フェイトのお父さまは乱雑な方に見えましたが、違いましたね。とても優しく、気遣いができる方なのですね」

「……うん。自慢の父さんだよ」


 小声で、そんなやりとりをした。


「ところで、宿はいらない、って……?」

「里帰りしたってのに、宿を取る必要なんてないだろ」

「でも、僕達が行くと、さすがに狭いでしょう?」

「大丈夫だ、問題ない」


 やけに自信たっぷりに言うのだけど……

 でも、家はそんなに広くなかったはず。

 一人二人ならともかく、四人もやってくると、寝場所に困るはずなのだけど……


 まあ、父さんがこう言うのだから、本当に問題はないのだろう。

 変な気遣いをすることなく、ウソはつかない人だ。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 みんなでお世話になろう。


「おいおい、ちげえだろ」

「え?」

「こういう時は、違う言葉を使うだろ?」

「あ……」


 僕は目を大きくして……

 次いで、ふんわりと笑う。


「ただいま、父さん」

「おかえり、息子よ」


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] フェイトのお父さんは果たして、亭主関白なのかな?
[一言] フェイト、おかえりm(_ _)m
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