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203話 スノウの正体は?

 レナが撤退したからなのか、ブルーアイランドの騒動は急速に治まっていった。


 スノウは元に戻り……

 暴徒も数を減らして、ほぼ全て拘束された。


 こうして事件は解決したのだけど、被害は大きい。

 たくさんの人が傷ついて、たくさんの建物が壊れた。

 死者も少なくない。


 どうして、レナはこんな惨劇を引き起こしたのか?

 スノウを暴走させて、新しい魔剣を作るとか言っていたけど……

 そのために街を犠牲にしていいなんてこと、絶対にない。


 今度会った時は……


「なにをするつもりなのか、真意を確かめないと」


 レナを放っておくことはできない。

 黎明の同盟を放っておくことはできない。


 いつか……


 そんな覚悟を決めるのだった。




――――――――――




 それはそうと。

 街の復興が一段落したところで、スノウのことが問題になった。


 多くの人がスノウが暴走するところを目撃している。


 その獣はなんなんだ?

 また暴走するのではないか?

 処分した方がいいのでは?


 そんな意見が多発したものの……

 ソフィアが全て黙らせた。


 スノウは自分達が管理する。

 もしも同じことが起きた場合、その責任は、剣聖である自分が全て負う。


 そこまで言うのならと、街の人達は納得してくれた。

 ありがたい。


 そうして……

 色々とあったものの、再び穏やかな日常が戻ってきた。


 戻ってきたのだけど……


「お手」

「ワンッ」

「おかわり」

「ワンッ」

「お座り」

「オン!」


 ライラさんの家の庭で、アイシャはスノウと遊んでいた。

 今は躾をしているらしく、成功する度に褒めて、犬用のお菓子をあげていた。


 ほんわりとする光景に和みつつ、本の山に埋もれて、たくさんの資料とにらめっこをするライラさんに視線を戻す。


「結局、アイシャは巫女っていうことでいいんですか?」

「んー、断言はできないけどね。私も、巫女についてそれほど詳しいわけじゃないし。ただ、状況を聞く限り、巫女と考えるのが自然かな?」

「だよね……」


 膨大な魔力を持っていて……

 それだけじゃなくて、不思議な力で暴走したスノウを元に戻してみせた。


 あんなこと、普通の人にできるわけがない。

 ライラさんの言う、巫女という特別な存在と考えるのが正しいだろう。


「アイシャちゃんのことが気になるなら、私が身体調査を……」

「ふふ、斬られたいんですか?」


 ソフィアがにっこりと笑いつつ、剣の柄に手を伸ばした。


「ごめんなさい冗談です」


 絶対本気だった。


 ……と思うのだけど、話がこじれるだけなので、口にはしないでおいた。


「それで、スノウのことなんだけど……スノウは神獣なのかな?」


 女神さまの使い。

 世界の裁定者。

 救世主。


 色々な言葉が使われているものの、正しい情報は見つからない。

 伝説の存在とされていて、知っている人も少なく、文献もほとんど残ってなくて……

 そのせいで、なにが正しいのか間違っているのか、わからないんだよね。


「たぶん、神獣で間違いないと思うよ」

「でも、どうして神獣がこんなところに……」

「んー、これは私の想像なんだけど」


 そう前置きして、ライラさんは話を続ける。


「スノウくんは、この街の守り神とか、そういう存在だったんじゃないかな? あるいは、その後継者。子供なのは、そういうことだね」

「守り神がそこらを歩いているものなの?」

「うーん、それはなんとも。ただ、巫女を助けるために出てきたのかも」

「そういえば、スノウが初めて姿を見せたのは、アイシャちゃんが迷子になった時ですね」


 アイシャを助けるためだとしたら、納得できる話だ。

 それほどまでに、巫女は神獣に愛されているのだろう。


「暴走したのは?」

「それも証拠はないけど……たくさんの人がおかしくなって、負の感情があふれたせいじゃないかな? 神獣って、人の影響を受けやすいのかも。だから、街がおかしくなって神獣もおかしくなった」

「一応、話の筋は通っていますね」


 スノウは街の守護者。

 アイシャが困っていたから、助けるために出てきた。

 でも、街の人々がおかしくなったため、その影響を受けて暴走してしまった。


 なるほど、と納得することはできる。

 できるのだけど……


「結局、全部、推論でしかないんだよね」


 それでもって、神獣がどういう存在なのかとか、肝心なところはなにもわからないままだ。


「これからどうすればいいのか……やれやれ、頭が痛いですね」

「悲観的になることはないんじゃないかな?」

「え?」

「わからないことは多いけど……でも、大事なところだけわかっていれば、それでいいと思うんだ」

「それは?」

「スノウも大事な家族、っていうことだよ」


 神獣だろうがなんだろうが、スノウはもう家族の一員だ。

 今更、どうこうと対応を変えることはない。


 それはソフィアも同意見らしく、優しく笑う。


「そうですね」

「君ら、お似合いだよ。まったく」


 僕達を見て、ライラさんはやれやれと苦笑するのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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