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202話 ウソだぁ

「ウソだぁ……」


 突然の第三者の声。

 慌てて振り返ると、レナの姿があった。


 いつもの笑顔はどこへやら。

 目を大きくして、とても驚いているみたいだ。


「完全に堕ちたはずなのに……あの状態から元に戻るなんて、聞いたことがないよ……堕ちた神獣を手に入れられるはずだったのに、それで新しい魔剣を作ることができるはずだったのに……」

「レナっ!」


 真っ先に動いたのはソフィアだ。

 攻撃対象をすぐに切り替えて、聖剣で斬りかかる。


「くっ」


 ほぼほぼ反射だけで、レナはソフィアの攻撃を防いでみせた。


 ただ、精神的なショックが大きいらしく、その動きにキレはない。

 ソフィアの連撃を防ぐことで精一杯な様子で、苦い顔をしていた。


「よく姿を見せることができましたね! 今すぐ、ここで、叩き切ってあげます!!!」

「あーもうっ、今は君なんかに構っているヒマはないんだよ!」

「くっ!」


 レナはその場でくるっと回転して、その勢いを乗せてソフィアを蹴りつけた。

 ソフィアは剣でガードするものの、勢いを殺すことはできず、吹き飛ばされてしまう。


「ソフィア!」

「私は大丈夫です! それよりも……」


 レナは今までにない焦りの表情を浮かべていた。

 そして、魔剣をアイシャとスノウに向ける。


「させる……かぁっ!!!」

「っ!?」


 アイシャとスノウ、それとリコリスを背中にかばい、レナと対峙する。

 彼女の放つ刃をガードして、カウンターを繰り出す。


「どいて!」

「どかないよ!」

「嫌いになるよ!?」

「君が勝手に言っていることだから!」


 何度か刃を交わす。


 いつものレナなら、僕なんかが相手になるわけがない。

 防ぐのは一度が限界で、そこで倒されてしまうだろう。


 でも、今は動揺しているせいか、剣が鈍い。

 おかげで、なんとか食らいつくことができた。


「一つ確認するよ!」

「なにさ!?」

「スノウにあんなひどいことをしたのは、レナでいいの!?」

「そうだよ、そうさ! でも、それのなにが悪いのさ! 正義はボク達にあるんだ!」

「そんなもの……!!!」


 レナの過去がどんなものなのか、それはわからない。

 スノウの正体がどういった存在なのか、それもわからない。


 だけど。


 あんなにも無邪気で優しい子を暴走させて……

 たくさんの悲しみと恐怖をばらまいて……


 それが正義?

 それが大義?


「認めてたまるかぁあああああっ!!!」

「っ!?」


 ありったけの想いを乗せて。

 ありったけの気持ちを込めて。


 全力で剣を振り下ろした。


 ギィンッ!!!


「……あ」


 雪水晶の剣が……折れた。


 負荷に耐えられず、刃が半ばから折れて、宙を舞う。

 破片がキラキラと舞い、輝いていた。


 でも……


「なっ!?」


 レナが持つ魔剣もタダでは済まなくて、その刀身にヒビが入っていた。

 折れるとまではいかないが……

 しかし、もう使い物にならない。


「う、うそだぁ……ボクの魔剣が、ティルフィングが……そこらの剣に傷つけられた……?」


 呆然とするレナだけど、状況を思い出したらしく、すぐ我に返る。


 こちらを睨みつけて……

 次いで、怒りの感情を消して、笑う。

 ものすごく楽しそうに、うれしそうに、喜びを携えて笑う。


「あはっ、あはははははは!!! あははははははははははははははははっ!!!!!!」

「レナ……?」

「ダメ。うそ、なにこれ。もう笑うしかないよ! ボクの魔剣が負けるなんて、しかも普通の剣に……あはははっ、すごいすごいすごい、本当にフェイトはすごいよ!!!」


 レナの目は子供のように、キラキラと輝いていた。

 英雄を見るような目を僕に向けている。


「あー……ホント、ダメだ。なんかもう、黎明の同盟の悲願とか、そういうのどうでもよくなってきちゃうよ。それよりも、とにかく、フェイトをボクのものにしたいな」

「……悪いけど、売約済みだから」

「そういう意思の硬いところも、好きだよ♪ ボク色に染め甲斐があるからね……ふふっ」


 レナは、一歩後ろへ下がる。


「ティルフィングを壊すなんていう、本当にすごいものを見せてもらったからね。今回は、おとなしく引くね。じゃあね、フェイト。いつか、絶対にボクのものにしてみせるから♪」


 レナは、パチリとウインクをして……

 その姿は、空気に溶けるかのようにして消えた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] レナの見落としたところは・・生き物の心の強さを見誤ったところといえようか。 彼女のいう正義とは・・?
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