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189話 ライラのピンチ

年末年始の更新についてのお知らせ:詳細は活動報告にて

 最初は、街の一角で暴動が起きていた。


 でも、それはどんどん広がっていって……

 今は街全体から悲鳴や怒号が聞こえてくる。


 騎士や冒険者も総動員されているみたいだけど、鎮圧には至っていない。

 むしろ拡大の傾向にあった。


「こんなの、どうすれば……って、弱気になったらダメだ!」


 暴漢を一人一人倒していてもキリがない。

 かといって、全員をまとめて倒す方法なんてない。


 ソフィアなら、あるいはやってのけそうだけど……

 でも、今はレナと戦っているだろう。


 他にレナを抑えることができる人はいない。

 レナのことはソフィアに任せて、僕は僕で、できることをやらないと。


「フェイト、どうするのよ?」

「……おとーさん……」

「今は、とにかく数を減らしていこう」


 暴漢の数は圧倒的で、冒険者や騎士も押されていた。


 でも、敵の数は有限だ。

 魔剣は無限にあるわけじゃない。


 地道な作業になるけど、一人一人、確実に打ち倒していくことが大事だ。

 そうすれば、必ず出口にたどり着くことができる。

 焦ることなく、堅実に前に進むことが大事なんだ。


 そんな結論を二人に話した。


「地味ねー。アイドル妖精のリコリスちゃんからしたら、ばばーっと、一気に倒してしまいたいわね」

「それができれば一番なんだけど、どうしようもないからね」

「敵を一箇所にまとめて、アイシャの魔法で無力化する、っていうのは?」


 アイシャの魔法というのは、光を放つライトのことだろう。

 まともに直視すれば、一時的に視力を奪われてしまう。


 良いアイディアかもしれないけど……


「……ううん、それはまずいかな」

「なんでよ?」

「アイシャを前に出すわけにはいかないよ、いくらなんでも危ない。それに、一箇所に集めるにしても、どうやって? 囮になるとしても、すごく危険だから」

「それは……」

「一気にまとめて、っていう気持ちはわかるけど、欲張らない方がいいと思う。焦らないで、堅実にいくべきだよ」

「フェイトらしい意見ね……ま、そこがフェイトの良いところね」


 リコリスは賛成してくれたらしく、にっかりと笑う。


「じゃあ、この無敵合体妖精リコリスちゃんも協力しようかしら!」


 合体って、なんのこと……?


「ふふん、このリコリスちゃんにかかれば、暴漢の一人や二人、ちょちょいと……」

「うがぁああああ、死ねぇえええええっ!!!」

「ぴゃあああああ!?」

「このっ!」


 突然、暴漢が現れて……

 リコリスが涙目になって悲鳴をあげて……


 刃が届く前に、なんとか割り込むことに成功して、暴漢を叩き伏せた。


「リコリス……だいじょうぶ?」

「あ、ありがと、アイシャ……やっばい、今、ちょービビったわ」

「オフゥ……」


 スノウが、残念なものを見るような目をリコリスに向けていた。


「……あっ」


 ふと、なにか思い出した様子でアイシャがつぶやいた。


「ねえ、おとーさん」

「うん、どうしたの?」

「あのね……ライラさんは、だいじょうぶかな?」

「……あっ」


 しまった!?

 街のことばかり考えていて、ライラさんのことを忘れていた!


 ライラさんの家は、街の外れにある丘の上。

 うまくいけば騒動に巻き込まれていないかもしれないけど……

 でも、それは楽観論というヤツだ。


 本当に大丈夫かどうか、この目で確認しておいた方がいい。


「ライラさんのところへ行こう!」

「オッケー! このスピードスター妖精リコリスちゃんについてきなさい!」




――――――――――




 ……一方、その頃。


「ひぃいいいいいっ!?」


 ライラ・イーグレットは、涙目になって悲鳴をあげていた。


 ドンドンドン! と家の扉が乱暴に叩かれている。

 扉の前に棚を倒してバリケードを築いたものの、まとめて壊されてしまいそうな勢いだ。


「出てこい出てこい出てこいよおおおおおぉっ!!!」

「女だっ、女をよこせぇ!!!」

「うがあああああぁっ!!!」


 扉を叩く音に混じり、怒号が聞こえてきた。

 どれもこれも獣のようで、人の理性というものがまるで感じられない。

 心が狂気と憎悪に塗り固められていた。


「な、なによこれ!? いったいなにが起きているのよ!?」


 昼前から街の方が騒がしくなり……

 気がつけば、この有様だ。


 逃げようとしても、すでに手遅れ。

 家の周りは複数の暴漢達に包囲されていた。


 なんとかバリケードを築いて、侵入を阻止したものの、それも時間の問題。

 いずれ破られてしまうだろう。


 そうなれば……


「いやいやいや! そんなの嫌だから!? 絶対に嫌だから!!!」


 ライラは研究一筋の学者バカではあるが、それでも女性だ。

 暴漢達の慰み者になるなんて、断固拒否。


 しかし……


 現状、どうすることもできない。

 迎え撃つことも追い払うこともできず、家に立てこもるだけ。

 それも、あと少しで突破されてしまいそう。


「くうううっ……こんなことになるなら、あの獣人ちゃん、徹底的に調査、研究をしておくべきだった!」


 ……意外と余裕のある発言をするライラだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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