表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/520

185話 二手に

 あちらこちらから悲鳴や怒声が聞こえてきた。

 それと一緒に、人が暴れるような乱暴な音。

 爆発音なんかも響いてくる。


 このブルーアイランドでなにが起きているのか?

 わからない。

 なにもわからないけど……


 このまま放置することはできない。


 どうすれば、この状況を止めることができる?

 いったい、どうすれば……


「……そういえば」


 ふと、思いついたことがあった。


「フェイト、なにか?」

「暴れていた人達が持っていたの、魔剣……だよね?」

「そうですね。断定はできませんが、似ていたと思います」

「魔剣のせいで人がおかしくなるのは、リーフランドの事件で証明されているわけで……それと、レナがいた」

「……もしかして」

「たぶん、レナの仕業だと思う」


 気づくのが遅いと、自分で自分に呆れてしまう。

 もっと早く、この答えにたどり着くべきだった。


 いや。


 それよりも前に……

 冒険者ギルドや騎士団などにレナのことを訴えて、彼女を探してもらうべきだった。

 可能なら捕まえてもらうべきだった。


 そうしなかったせいで、こんなことに……


「フェイト、悔やむのは後にしましょう。今は、やれることをやらないと」

「……うん、そうだね」


 反省は後回しだ。

 目の前の状況に対処しないと。


「二手に別れましょう。私はレナを探したいと思います」

「それなら僕も……」

「いえ。フェイトは、さきほどと同じように、街で暴れている人達の対処をしてください。魔剣を持つ人は強く、並の冒険者では相手になりません」

「それじゃあ、僕でも……」

「大丈夫です。フェイトは強いですよ」


 僕を勇気づけてくれるかのように、ソフィアが微笑む。


 その笑顔は優しくて、温かくて……

 心が奮い立つ。


「うん、了解。少しでも被害を減らせるように、がんばってみるよ」

「お願いします。私は、どうにかしてレナを見つけ出して、この騒動を収める方法がないか聞き出してみようと思います」


 そう言うソフィアは怖い顔をしていた。


 聞き出す、と言っていたけれど……

 強引に、とか力づくでも、とか、そんな言葉がつくんだろうな。


 それを止めるつもりはない。

 レナは、どことなく憎めない子だけど……

 こんな状況を引き起こしたのなら、なにをしても止めなければいけないから。


「リコリスはフェイトのサポートをしてくれませんか?」

「えっ」


 とても嫌そうな顔に。


「あたし、宿に引きこもりたいんだけど。危険危険、って本能が訴えてくるんだけど……」

「大丈夫です。リコリスのことは、フェイトが守ります。あと、あとでおいしいクッキーをあげます」

「いいわ!」


 あっさり前言撤回して、一緒に行くことを決めたリコリス。

 それでいいのかな? と思うけど……

 まあ、リコリスだからいいか。


「アイシャちゃんとスノウも、フェイトと一緒にいてくださいね」


 街の惨状を見ると、屋内にいても安全とは言い切れない。

 魔剣を手にした暴漢が強引に扉を開けて、侵入してくるかもしれないからだ。


 それなら一緒にいた方がいい。

 目の届く範囲にいれば、きちんと守ることができる。


「アイシャ、怖い?」

「ううん。おとーさんが一緒なら、大丈夫」

「安心してね。あと、スノウをしっかりと抱えていてね」

「うん!」


 アイシャはスノウを両手で抱えて、しっかりと頷いてみせた。


 こんな状況だ。

 本当は怖くて、泣きたいはずなのに……

 でも我慢して、気丈な姿を見せてくれている。


 僕にはもったいないくらい、よくできた娘だ。

 でも、そういう考えはなしにしないと。

 アイシャに似合う父親になれるよう、がんばろう。


「では、私はそろそろ行きます」

「おかーさん」

「はい、なんですか?」

「気をつけてね」


 娘の健気な台詞に、ソフィアはデレデレっとした顔に。

 それから、おいでおいでをして、アイシャを抱きしめた。


「大丈夫ですよ、アイシャちゃん。あなたのお母さんは、世界で一番強いんですからね」

「おー」

「だから、安心してくださいね」

「うん」


 世界で一番というのは、あながちウソとも言えないところがソフィアのすごいところだ。

 アイシャも安心したらしく、落ち着きなく揺れていた尻尾が止まる。


「フェイトも気をつけてくださいね」

「うん、大丈夫だよ」

「では、また後で」


 ソフィアは剣の柄を掴みつつ、大きく跳躍して、建物の向こうに消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ