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184話 本当の狙い

「おー、すごいすごい。ばちぼこに荒れてるねえ」


 ブルーアイランドの中央にある教会。

 そのてっぺんにレナの姿があった。


 屋根の頂点に器用に座り、街全体を眺めている。


 その街は、あちらこちらから悲鳴があがっていた。

 よく見てみると、街を守護するべきはずの騎士が暴れていた。

 いずれも目を血走らせて、正気を失い、目につくもの全てに攻撃を繰り返している。


 彼らを凶行に駆り立てている原因は、魔剣だ。

 それなりの力は秘めているが、一週間ほどで精神に異常をきたしてしまうという、劣化コピー品だ。


 その魔剣を、レナはあちらこちらでばらまいた。

 騎士団に売り込み。

 冒険者に売り込み。

 自衛のためと、民間人にも売り込んだ。


 結果、ブルーアイランドの多くの人が魔剣を手にすることとなり……

 次から次に心が壊れて、暴走を始めることに。


 秩序を守るべき立場のはずの騎士が人々を襲う。

 親が子を襲う。

 縁もゆかりもない相手を、親の仇のように襲う。


 ブルーアイランドは煉獄のようになっていた。


「うんうん、思っていた以上の成果かな?」


 恐ろしい光景を目の当たりにして、しかし、レナは満足そうだった。


 それもそのはずだ。

 この光景ができるように仕組み、暗躍してきたのは、他ならぬレナなのだから。


「いやー、がんばった、私! ブルーアイランドの秩序を崩壊させるために、こそこそと、毎日魔剣を配り歩いていたからね。あれは地味でつまらないから、本当に大変だったよ。でも、おかげで成功かな?」


 煉獄のような光景を見て、レナはにっこりと笑う。

 満足だというように、にっこりと笑う。


 その笑みは、天使のように綺麗なものではあるが……

 奥に隠されている感情は、黒く、暗い炎だった。


「……順調そうだな」

「あ、リケン。やっほー」


 振り返ると、同志である初老の男……リケンの姿があった。


 音もなく現れたのだけど、レナは気にしない。

 驚くこともない。

 彼なら、それくらいやってのけて当たり前なのだ。


「少し心配していたが、うまくやっているではないか」

「まーねー。っていうか、心配するとかひどくない? ボクは、やる時はしっかりとやるんだよ?」

「それはわかっているが、お前は、時に遊びが混じるからな。リーフランドの時もそうだっただろう?」

「フェイトのことなら、遊びじゃなくて本気だし」

「やれやれ」


 リケンは呆れつつ、しかし、話題を変えることにした。


 本来なら、フェイトのことについてあれこれと正したい。

 妙な感情を寄せることなく、斬り捨ててしまえと言いたい。


 しかし、それなりの付き合いがあるため、レナが本気ということがわかる。

 そんな彼女につまらないことを言えば、逆にリケンの方が斬られてしまうだろう。


「うまくいっているようだが、計画は最終段階か?」

「そだね。見ての通り、ブルーアイランドの秩序は崩壊した。負の感情が溜まって溜まって溜まって……うん、けっこう大変なことになっているね」


 荒れ狂う街を見て、レナはにっこりと笑う。


「この状態なら、封印を壊すことができるかな?」

「街の秩序を崩壊させて、負の念を集め、それを武器として封印を砕く……ふむ。始めに聞いた時は、博打要素の強い作戦と思ったが、なかなかどうして。うまくいっているようで、驚きだ」

「えっへっへー。言ったでしょ、ボクはやる時はやるんだよ?」


 レナは胸を張って、自慢そうに微笑む。


 街一つを混乱に陥れて。

 負傷者が多数出ている状況で。


 それを見て、なお、笑みを浮かべ誇らしげにする。

 レナは、そんなことができる少女だった。


「さてと……そろそろ、締めに入ろうかな?」

「どこへ行く?」

「締めだよ、締め。このまま放っておいても、たぶん、封印は崩壊すると思うけど……でもボク、待つのは苦手なんだよね」

「封印を破壊するのか?」

「そういうこと。今の状態なら、手出しできると思うからね。確か……四つの教会に、それぞれ封印が分散されているんだよね?」

「そうだな」

「あー、四つかあ。面倒だなあ。ボク、強いけど、さすがに体は一つしかないからなー。あー、面倒だなあ」

「……はぁ」


 やれやれ、とリケンはため息をこぼした。


「儂も手伝おう」

「ホント!? マジで?」

「それを期待していたくせに、白々しい」

「えへへー、ごめんごめん。でも、手伝ってくれるのはうれしいよ。さっきも言ったけど、ボクの体は一つだけだからね。四箇所も回るのは面倒だし、途中で対策されるかもしれないからねー」

「対策はないだろう。この街の者は……人間は愚かだ。過去のことなんて覚えていない。教会の封印のことなんて、知っている者はおらぬさ」

「だといいんだけどねー」


 レナは街を見下ろした。

 そして、ニヤリと笑う。


「でも、敵はいるよ」

「どういうことだ?」

「剣聖がいるから、たぶん、邪魔してくるだろうね」

「……そういう大事なことは早く言え」

「サプライズ?」

「いらんサプライズだな」


 はぁ、とリケンのため息が再びこぼれた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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