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183話 止まらない悪意

「それは俺のものだ! 俺のものなんだよ、離れろ離れろ離れろおおおおおっ!!!」

「うあああああ! お前ら、みんな敵だ! くるな、くるんじゃねえ!」

「くそくそくそっ、なんでこんなことに! 俺が一番なのに、俺が!!!」


 現場に駆けつけると、とんでもないことになっていた。


 目を血走らせて、泡を吹くように叫ぶ人が多数。

 意味不明なことを口走りながら、剣を振り回している。


 騎士団と冒険者が協力して制圧を試みるものの、なかなかうまくいかない。


 というのも、まだ逃げ遅れた人が多数いるからだ。

 腰を抜かして動けない人。

 迷子になり、泣いている子供。

 怪我をして歩けない人。

 それらの人を守りながらの戦いなので、どうしても劣勢になってしまう。


 煉獄があるとしたら、こんなところなのかもしれない。

 そう思うくらいひどいことになっていた。


「あれは……やっぱり、魔剣!」


 暴れている人達は、全員、魔剣を手にしていた。


 以前、見たものとタイプが違う。

 でも、あの禍々しい気配を間違えることはない。


「フェイト! 連中は私が制圧します」

「うん。なら僕は、逃げ遅れた人を!」

「お願いします! それと、リコリスはアイシャとスノウをお願いします」

「任せておきなさい!」


 まず最初に、ソフィアが動いた。


 石畳にヒビを入れてしまうほどに力を込めて、地面を蹴る。

 瞬間移動をしたのではないかと錯覚するほどの超加速。


 そして、抜剣。


「神王竜剣術、四之太刀……蓮華!」


 聖剣を一閃。

 暴徒が持つ魔剣を、真正面から叩き伏せて、両断した。


 急ブレーキをかけて、その場でくるりと回転。

 そのままの勢いで、暴徒の脇腹を蹴り上げる。


「!?!?!?」


 暴徒は悲鳴をあげることもできず、昏倒した。

 骨が砕ける音がここまで響いてきたものの、死んではいないと思う。


 さらに、ソフィアは倒れた暴徒の足を踏み、折る。

 追撃はひどいと思われるかもしれないけど、完全に機動力を奪うためには仕方ない。


「次、かかってきなさい!」


 ソフィアは鋭く吠えつつ、聖剣エクスカリバーを構え直した。


 その迫力に暴徒達はわずかに怯む。

 しかし、すぐに獣のように叫びつつ、ソフィアに一斉に襲いかかった。


 その数は十を超えている。

 さすがのソフィアも、あれじゃあ……


 ……なんて心配は無用だった。


「はぁあああああっ!!!」


 ソフィアは華麗に苛烈に舞い踊り、剣を振るい、次々と暴漢を叩きのめしていく。

 嵐に巻き込まれたかのように、暴漢達はどんどん倒れていった。

 剣を叩き折られて、骨を砕かれて、行動不能に陥る。


 すごい。

 なんてすごいんだろう。


 あれが剣聖。

 ソフィアの力は知っているつもりだったけど、でも、こうして改めて見るとすごいの一言に尽きる。


 僕も、あの領域に行きたい。

 いや。

 彼女の隣に並びたい。


 強く、そう思った。


 とはいえ、憧れるのは後回し。

 今は人命救助を優先しないと。


「大丈夫ですか!?」


 動けない人達に手を貸して、浜辺から避難させていく。

 騎士や冒険者だけじゃなくて、街の人々も手を貸してくれたので、思っていた以上にスムーズに避難が終わりそうだ。


 ただ、暴徒の数はなかなか減らない。

 ソフィアが叩きのめす以上の速さで、どこからともなく増援が追加されているらしく、完全制圧は遠い。


「リコリスちゃん、ウルトラメガファイアー!」


 ふと見ると、アイシャ達のところにも暴徒が。

 リコリスが魔法を放ち、撃退しようとするが……しかし、暴徒は体を燃やしつつも止まらない。

 目を血走らせていて、デタラメに剣を振るう。


 完全に理性を失っている。


「このっ!」


 神王竜剣術、四之太刀・蓮華。


 ソフィアと比べると技の切れは弱い。

 それでも暴徒には有効だったらしく、なんとか打ち倒すことに成功した。


「ちょっとフェイト! こいつら、めっちゃやばいんですけど!? 目がイッちゃってるわよ!?」

「ここにいたら危険だ! リコリスは、アイシャとスノウを連れてギルドに引き返して……いや、待って」


 落ち着いて耳を済ませてみると、街の方からも悲鳴が聞こえてきた。


 まさか、浜辺だけじゃなくて街中にも暴徒が!?


「これ、やばくない……?」

「う、うん……いったい、なにが起きているんだろう……?」


 底知れない悪意が街中で吹き荒れているような気がした。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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