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172話 気晴らしは必要

 あれからリコリスの指導の元、アイシャは魔法の練習に励んだ。


 がんばって、がんばって、がんばって……

 しかし、うまくいかない。


 あまりにも魔力量が多いせいで、制御の難易度が格段に跳ね上がっているらしい。

 魔法が発動することなく失敗してしまうか……

 発動したとしても、さっきのようにとんでもない効果を生み出してしまうか。


 その二択で、なかなか思うようにいかない。


 そして……


「うっ……うううぅ……!」


 どうにもこうにも思い通りにいかなくて、アイシャが涙目になってしまう。


 そんなアイシャの頭を、リコリスがぽんぽんと撫でた。


「そんな顔しないの」

「でも……」

「最初からうまくいくなんてこと、ないわ。この天才美少女リコリスちゃんでさえ、魔法をうまく扱えるようになるまで何年もかかったもの」

「そう……なの?」

「ええ、そうよ。だから、落ち込まないの。これから何日もがんばらないといけないんだから」

「……」

「それとも、そんなにがんばれない? もうやめる? 別に、あたしはそれでもいいわよ。無理して辛いことする必要はないものね」

「……ううん、がんばる」


 アイシャは指先で涙を拭い、ふんす、と鼻息を荒くした。


「がんばって、魔法を覚えるの。それで、おとーさんとおかーさんの力になるの」

「うんうん、そうやって努力をすることが……」

「アイシャちゃん!」

「ふぎゅ!?」


 リコリスがドヤ顔で語るものの……

 途中で、娘の愛らしさに我慢できなくなった様子で、ソフィアがアイシャを抱きしめた。


 ……間にいるリコリスは潰されていた。


「あーもう、アイシャちゃんは健気でかわいくて、かわいいですね!」

「おかーさん、苦しい……」

「アイシャちゃんが悪いんですよ? そうやって、お母さんを誘惑するんですから」

「ふあ……?」


 キョトンとするアイシャ。

 目をハートマークにして、ひたすらに娘を愛でるソフィア。


 うん。

 一時はどうなるかと思ったけど、うまい具合に場がほぐれてよかった。


 ただ……


「ぐえええ……し、死ぬぅ……」

「ソフィア……そろそろリコリスが大変だから、一度、離れようね?」


 アイシャのことになると、周囲が目に入らなくなるのがソフィアの欠点だった。




――――――――――




 翌朝。


 鈍らない程度に体を動かして……

 みんなで一緒に朝食を食べて……


 それから、再び海へ。


「おとーさん、おかーさん。見て?」


 水着姿のアイシャは、尻尾をぶんぶんと振りつつ、元気よく海を泳いでいた。

 すっかり泳ぎ上手だ。


 ライラの話によると、獣人は人間よりも優れているらしいから……

 泳ぎをすぐにマスターすることができたのだろう。


 いや。

 そんなことは関係ないかな?

 単純に、アイシャがとても優れているからなのかもしれない。


 ……なんてことを考える僕は、親ばかなのだろうか?


「よかった、アイシャちゃんが元気になって」

「うん、そうだね」


 僕とソフィアは水着に着替えているものの、まだ泳いでいない。

 パラソルの下に並んで座り、楽しそうに泳ぐアイシャを眺めている。


 海で遊ぶのは楽しいんだけど、でも、こうしてのんびりする時間も楽しい。

 大好きな人が一緒だとなおさらだ。


 ただ……


「ん……海の風は気持ちいいですね。ちょっとひんやりしてて、心地いいです」

「そ、そうだね」


 ソフィアの水着姿は昨日も見たんだけど……

 でも、慣れない。


 色々なところが露出していて。

 ついつい、変なところに目がいきそうになって。

 ドキドキして。


 うぅ……こんなことを考えているのが知られたら、幻滅されてしまうかも。


「ふふ。フェイト、顔が赤いですが、どうしたのですか?」

「え? い、いや、なにもないけど……」

「本当に?」


 ソフィアが身を乗り出すようにして、こちらの顔を覗き込んできた。


 ち、近い。

 それに、見上げるようにしているものだから胸元が強調されて……


「ふふ」


 ソフィアがニヤリと笑う。

 わかってやっているのだろうか?

 だとしたら、ソフィアは剣聖じゃなくて小悪魔だ。


「……ふがっ」

「「っ!?」」


 ふと、隣からリコリスのいびきが聞こえてきた。

 体を大の字にして、だらしない格好で寝ている。


 二人きりの世界を作っていた僕達は、途端に恥ずかしくなり……


「「……」」


 共に顔を熱くして、黙り込んでしまうのだった。


 恥ずかしいけど……

 でも……うん、平和だ。

 こんな時間がずっと続いてほしいと思う。


「……あれ?」


 でも、そこでふと気がついた。

 泳いでいるはずのアイシャが、いつの間にか姿を消していることに。

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] "ソフィアの悪い欠点だった。" 敢えて言いますね。 ミスにも二通り有ると思うのです。 重箱の隅を突つく様な 指摘するヤツの意地悪さが滲み出る これは仕方が無いと思えるミスと 一目瞭然、…
[良い点] ソフィアがフェイトのからかい方に 習熟して来てませんか? (笑) 天然ジゴロもこうなってしまっては ・・・ (苦笑) フェイトの逆襲 (⁉︎) に期待します! [気になる点] 投稿する…
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