155話 川の字
旅の目的がズレて、すっかり観光を楽しんでいるのだけど……
でも、獣人研究家が戻ってこないことにはどうしようもない。
それに、色々とあったからか、みんなでゆっくりする時間がなかったし……
気持ちを切り替えて、ブルーアイランドを楽しむことにした。
そして夜。
ごはんを食べて、お風呂に入り……
そして、アイシャがうつらうつらと眠そうにする。
そろそろ寝る時間なのだけど……
「……ど、どうしようか?」
「……ど、どうしましょう?」
ベッドは一つ。
サイズは大きいから、みんなで一緒に寝ることはできるのだけど……
でもそれは、ソフィアと一緒に寝るということ。
そんなことをしていいのだろうか?
僕とソフィアの想いは同じだけど……
でも、まだ結婚はしていない。
それなのに同じベッドで寝るなんて、とても不誠実で破廉恥なことでは?
「えっと……僕、ソファーで寝るね」
「えっ」
「やっぱり、一緒に寝るのはどうかと思うから」
「そ、それは……でも、フェイトにだけそんなことをさせるわけには……」
なんだろう?
ソフィアは、どことなく残念そうにしているような……?
もしかして、一緒に寝たかった?
いや、まさか。
ソフィアに限って、そんなえっちなことを考えているわけがない。
「ソフィアって、意外とむっつりなのね」
「な、なにを言うのですか!?」
「ふふーん。フェイトはよくわかってないみたいだけど、このリコリスちゃんをごまかすことはできないわよ」
「くっ……き、斬ります!」
「ちょっ、恥ずかしいからって錯乱しないでよ!?」
二人はなにをやっているのだろう?
とにかくも。
僕はソファーに移動しようとして……
「……おとーさん」
アイシャに服の端を掴まれて、止められてしまう。
「どうしたの?」
「寝よう……?」
「うん、そうだね。もう遅い時間だから、寝ないといけないね」
「ううん……おとーさんも、一緒」
「えっと……」
アイシャはみんな一緒がいいみたいだ。
困った。
アイシャが願うようにしてあげたいものの、でも、ソフィアと同じベッドで寝てしまうなんて……
「まったく、フェイトもソフィアも考えすぎなのよ。あたしもアイシャも一緒なんだから、あはーんなことはできないでしょ」
「その例えは、ちょっと……」
「ただ一緒に寝るだけ。気にすることはないの。ほら、さっさと寝るわよ」
「ちょ……」
リコリスにペチペチと叩かれて、ベッドの方へ追いやられてしまう。
一方のソフィアも、アイシャに手を引かれ、ベッドに。
「……」
「……」
僕とソフィアはベッドの上で見つめ合い……
「……し、仕方ないから寝ようか」
「……そ、そうですね」
みんなで一緒に寝ることにした。
僕、アイシャ、ソフィアの順に並んで……
そして明かりを消して横になる。
ちなみに、リコリスはアイシャの胸元に乗っていた。
「……」
「……」
緊張で眠れない。
ちらりと横を見ると、ソフィアもまだ起きているみたいだ。
「ね、眠れないね……」
「こうしていると、色々と、い、意識してしまいます……」
「う、うん」
「……」
「……」
会話が続かない。
ひたすらに緊張してしまう。
僕、眠れるのかな……?
「んぅ……」
すでに半分寝ていたアイシャは、すぐに眠りに落ちたらしい。
すぅすぅと穏やかな寝息を立てて……
それから、それぞれの手で僕とソフィアを掴む。
「おとーさん……おかさーん……一緒」
そんな優しい声。
それを聞いて、なんだか緊張しているのがバカらしくなってきた。
リコリスが言うように、なにかするわけじゃないし……
家族で寝るだけ。
なら、緊張する必要なんてない。
「ソフィア」
「はい」
「おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
僕は、そっと目を閉じた。
今夜は良い夢を見ることができそうだ。
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