表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/520

152話 ブルーアイランド

 海の街ブルーアイランド。


 潮風が吹く街は広く、あちらこちらを水が流れていた。

 見ているだけで涼しくなることができて、気持ちいい。


 街の奥へ進むと、大きな港。

 そして、遊泳場。


 港には、大小さまざまな船が停泊していて、遠くから運ばれてきた荷物が降ろされたり、獲れたての魚が運搬されていた。

 海の街と言われているだけあって、交易と漁業が栄えているのだろう。


 港から少し離れたところに遊泳場が見える。

 白い砂浜と澄んだ海。

 水着を着て遊んでいる人がたくさんいて、こちらも泳ぎたくなってしまう。


「わぁあああああ」


 アイシャが目をキラキラと輝かせていた。

 たぶん、海を見るのは初めてなんだろう。


「おとーさん、おかーさん! すごい、水いっぱい!」

「ふふ、そうですね。あれが海ですよ」

「海……おー!」


 尻尾がはちきれんばかりにブンブンと横に振られている。

 まさか、ここまで楽しそうにするなんて。


 ここには、獣人のことを調べるためにやってきたんだけど……

 時間があれば、海で遊んでもいいかもしれない。


「しかし、人が多いわねー」


 ふわふわと浮くリコリスが、ちょっとげんなりとした様子で言う。


 彼女が言う通り、街はたくさんの人であふれかえっていた。

 ほとんどが観光客なのだろう。

 みんな笑顔を浮かべていて、とても楽しそうだ。


「最近は暑くなってきたから、観光シーズンなのでしょうね」

「露店もたくさんあるね」

「……じゅる……」


 露店から流れてくるいい匂いを嗅いで、アイシャがちょっとよだれを垂らしていた。

 いつの間に、そんな食いしん坊に……?


「おとーさん、おかーさん」

「えっと……今買い食いをしちゃうと、お昼ごはんが食べられなくなっちゃうから」

「うー……」


 お願い、というような感じで、アイシャがじっと見つめてくる。

 心が折れてしまいそう。


 で、でも、きちんとした教育のために、ここは心を鬼にしないと。


「ダメだよ、アイシャ。買い食いをするなら、ごはんの前じゃなくて後にして……」

「アイシャ、なにを食べたいですか? 一緒に選びましょうか」

「ソフィア!?」

「う……だ、だってアイシャちゃんがかわいすぎるので……ダメです! 私には、こんなアイシャちゃんのお願いを断るなんてできません!」


 ダメダメなことを言いつつ、ソフィアがアイシャを抱きしめる。

 ともすれば、彼女が娘に甘えているみたいだ。


「あのね……」

「ちょっとソフィア、親がそんなんじゃダメでしょ」


 意外というか、リコリスが口を挟んできた。


「親は子供の手本にならないといけないんだから。その親であるあんたが、意味もなく甘やかしてどうするのよ」

「で、ですが、アイシャが食べたいと……」

「確かに、子供のお腹をいっぱいにするのは親の仕事よ。でも、フェイトが言うように、ごはんが食べられなくなったら意味ないでしょ。そういう、きちんとした理由がある時はダメって言うこと。でないと、大人も子供もダメダメになるわよ」

「……申しわけありません」


 しゅんと、ソフィアが落ち込んでしまう。


「フェイトもフェイトよ。ソフィアの暴走を許してどうするの?」

「うっ……」

「あんたがしっかりと制御しなさい。フェイト達のためじゃなくて、アイシャのためなのよ」

「ごめんなさい……」


 僕も怒られてしまう。

 でも、当然のことだと思うので、素直に頭を下げた。


 というか……


「リコリスって、けっこう真面目にものを考えているんだね」


 そこが意外だった。


「なによ、普段は適当って言いたいわけ?」

「そんなことは……」

「ま、適当だけどね」

「認めた!?」

「でも、本当にダメな時は、ちゃんとしたことくらい言うわよ。でないと、フェイトもソフィアもダメダメになっちゃいそうなんだもの」

「「面目ない……」」

「ふふん、この天災美少女スーパーウルトラハイパーメガ妖精リコリスちゃんに感謝なさい!」


 すぐ調子に乗るところは、やっぱりいつも通りだった。

 でも、今、天才の文字が違う意味になっていたような……?


「おとーさん、おかーさん……わたし、がまんするね?」

「うん。ごめんね、アイシャ。今度、たくさん食べようね」

「うん!」

「では、まずはごはんを食べて……それから宿を探しましょうか」

「そうだね」




――――――――――




 街を歩くこと三十分。

 おいしそうな匂いがする店でごはんを食べて、そのまま宿のチェックインをした。


 広くて安く、長期滞在も問題なし。

 ごはんはおいしく、個室のお風呂もある。


 かなりの好条件なのだけど、一つ、問題があって……


「……同じ部屋ですね」

「……そうだね」


 一部屋しか空いておらず、同じ部屋に泊まることに。


 たくさん人がいるから、他の宿が空いているかわからないし……

 これだけの好条件なら、多少のことは気にしない。

 そう思っていたのだけど、ベッドが一つだけという予想外の事態に。


 サイズはかなり大きく、四人が寝ても問題はない。

 ないのだけど……


「「……」」


 一つのベッドで一緒に寝るということで、僕とソフィアはあれこれと想像して意識していまい、顔を熱くしてしまう。


「おとーさん? おかーさん?」

「いい、アイシャ。この二人はバカップルだけど、でも初心でダメダメ、っていう典型的な例よ」

「おー?」


 リコリスのニヤニヤ顔も気にならないくらい、今の僕達は照れていた。


『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今から約半年前、ここらで一度区切って、他の作品を見に行きました。そのコメントをここで見つけて、ようやく最初から読み直して、半年ぶりに戻ってきました! ここから、どこまで進んだのか読んでいこ…
[一言] 物語読んでいて、楽しいですが、ここらで1度他の作品も見たくなったので、暫く他の作品を見に行きます。 これまでコメントの返信ありがとうございました。 また気がついたらこの物語や他の物語も見に戻…
[気になる点] やはり ・・・ " 天災" でしたか ・・・ (爆笑) まぁ、才 ・・・ というか " 年の功 " な顔 (笑) も ありますし ・・・ " 遊び人 " から転職した " 賢者 " …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ