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148話 志

 いつものようにソフィアと一緒に遊ぶ。

 雪遊びをして、ごはんを食べて、それからまた雪遊び。


 彼女と出会ってから、ほぼ毎日雪遊びをしているけど、ぜんぜん飽きない。

 毎日、ソフィアの違う顔を見ることができて……

 むしろ、どんどん楽しくなっていた。


 そんなある日のこと。


「フェイトは、将来の夢はありますか?」


 ふと、そんなことを聞かれた。


「うん、あるよ」

「わ、即答です」


 ソフィアの目がキラキラと輝いた。

 どんな夢ですか? 教えてくれませんか?

 そう言っているみたいだ。


「僕は、冒険者になりたいんだ」

「冒険者……ですか?」


 色々な依頼を請けて、たくさんの人の力になって。

 強敵を倒して、英雄と呼ばれるようになり。

 未知の場所を探索して、財宝を手に入れる。


 そんな冒険者になりたい。


「どうして、そう思うように?」

「きっかけは大したことじゃないんだ。この前、お父さんとお母さんに読んでもらった絵本に冒険者の話があって……それ、すごいワクワクしたんだ!」


 あの興奮と熱は、今でもハッキリと覚えている。

 話を聞いただけなのに、なんだか、体が熱くなってきて……

 うずうずしてきて、僕も冒険者になりたい! という思いでいっぱいになった。


「冒険者になるため、ちょっとずつだけど体も鍛えているんだ」

「……そうなんですか」


 なぜかソフィアが暗い顔に。

 どうしたんだろう?

 僕としては、すごいとか応援しますとか、そういう反応を期待していたんだけど……


「ソフィア?」

「……じゃあフェイトは、いつか街を出ていってしまうんですか?」

「夢が叶ったら……うん、そうなると思う」

「そう、ですか……」


 ますます暗い顔に。


「ねえ、ソフィア。どうしたの? なんで、寂しそうにしているの?」

「だって……私、フェイトとずっと一緒にいられるものだと思っていて……でも、フェイトはいつか街を出ていってしまうから……寂しいです」

「あ……」


 ソフィアの言葉に、僕は頭を殴られたような衝撃を受けた。


 そっか……

 冒険者になると、ソフィアとは一緒にいられないんだ。

 そんな当たり前のこと、ぜんぜん考えていなかった。


「それ、は……」


 冒険者になりたい。

 でも、ソフィアと別れたくない。


 相反する想いがぶつかって、心がぐちゃぐちゃになってしまう。

 僕は……


「あ、そうだ!」

「フェイト?」

「ソフィアも一緒に冒険者になろうよ!」

「え?」

「一緒に冒険者になって……それで、一緒に世界中を旅しよう?」


 我ながらナイスアイディアだと思う。


「で、ですが私は……」

「イヤ?」

「そんなことは! ですが……私は、運動があまり得意ではありません……」


 一緒に遊ぶようになって、しばらくしてから知ったのだけど……

 ソフィアはお嬢さまみたいで、あまり運動をしたことがないとか。


 だから、かけっこはいつも僕が勝つし、重いものを持つことはできない。


「でも、ソフィアは運動神経とか、そういうのはすごく良いと思うよ?」

「そんなことは……」

「ううん、本当にそう思うよ。だって、時々、すごいって思うことがあるし」


 後ろから飛んできたボールを振り返らずに避けたり。

 絶妙なバランス感覚を持っていたり。


 本当に運動が苦手なの?

 と思うようなことが、度々ある。


「だから、きっとすごい冒険者になると思うんだ」

「私が……」

「それで、僕と一緒に色々なところを旅しよう? 二人で。きっと、すごく楽しくなると思うんだ。今みたいに……ううん、今まで以上に!」

「……フェイト……」


 僕は、できる限りの想いを伝えた。

 あとは、ソフィア次第だと思う。


「……私でも、冒険者になれると思いますか?」

「もちろん!」

「……フェイトは、ずっとずっと一緒にいてくれますか?」

「もちろん!」

「約束……してくれますか?」


 ソフィアは、おずおずと小指を差し出してきた。

 僕は迷うことなく、自分の小指を絡める。


「うん、約束」

「……はい!」

「一緒に冒険者になろうね!」

「あと……ずっと一緒です」


 この日、僕達は約束を交わした。

 それは、ずっとずっと破られることなく、生涯に渡って守られていく約束だ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 憧れから始まるフェイトの原点ですね。 暗黒の奴隷時代を生き延びるだけでは無く、 規格外の身体能力を手に入れる事が出来たのも、 強い想いとソフィアとの約束が支えに在ったから ・・・ です…
[良い点] 「あと……ずっと一緒です」 ソフィアにとっては、フェイトと冒険者になる約束以上に ずっと一緒に居たい思いが強い事が伝わってきた [一言] ここからソフィア伝説(剣聖への道)が始まった訳で…
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