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145話 新しい街と新しい出会い

 カラカラ、カラカラと馬車の車輪が鳴る。

 それと一緒にわずかに振動が伝わってくる。


 とても退屈な時間。

 でも、それはもう終わりだ。


「わぁ!」


 馬車から降りると、見たことのない景色が広がる。

 たくさんの緑と花がある、とても綺麗な街だ。


「ここが……」

「そうだよ、フェイト」

「ここが、今日から私達が暮らす街よ」


 お父さんとお母さんが僕の頭を撫でてくれる。

 二人は笑顔だ。

 これから始まる新しい生活を楽しみにしているのかもしれない。


 それは僕も同じで……


「お父さん! お母さん! 街を探検してきてもいい?」

「うーん……気持ちはわからないでもないが、迷子にならないか心配だね」

「フェイト、道はわかる?」

「うん。新しいおうちは、公園の近くにあるお花屋さんの隣だよね?」

「もう覚えているの? ふふ、フェイトは賢いわね」

「これなら心配はいらないかな? ただ、もしも道に迷ったなら、大人の人にこれを見せるんだよ。家の場所が書かれているから、案内してもらうといい」

「うん。ありがとう、お父さん」


 お父さんから地図を受け取り、それをポケットへ。

 そして僕は、新しい街の探検を始めた。




――――――――――




 この街の名前は、スノウレイク。

 雪に包まれた街だ。


「すごいなー、すごいなー。これが雪なんだ」


 歩くと、サクサクという感触が伝わってくる。

 今まで味わったことのない、初めて。


 手で雪をすくってみると、すごくひんやりとした。

 さらにそのまま持っていると、今度はチクチクするような感じで、ジーンとなる。


「おー」


 これが雪。

 すごい、すごい、すごい。


「良いこと、いっぱいありそう!」


 初めて見る雪に、僕はいっぱい元気になっていた。

 このまま、街をぐるりと駆け回ることができそうだ。


 というか、実際に走ってみようかな?

 それくらいに元気が有り余っていて、体を動かしたい気分だ。


「よーし、さっそく……!」


 僕は、おもいきり走り出して……


「うわっ!?」


 地面が凍っていて、ツルッと滑ってしまう。


 走っていたから勢いがついていて……

 ダメだ!


 思わず目をつむる。


「……あれ?」


 でも、衝撃は訪れない。

 代わりに、ぱふん、という柔らかい感触。


「あの……大丈夫ですか?」


 恐る恐る目を開けてみると……

 僕は、女の子に受け止められていた。


 いや。


 女の子なのだろうか?

 その子は、まるで妖精のようだった。


 透き通るような髪は、雪のように輝いていた。

 肌も白く、まるで人形みたい。


「……」

「もしもし?」

「はっ!?」


 再び声をかけられて我に返る。


 びっくりした。

 女の子が綺麗だから……

 本当に綺麗だから、頭の中がまっしろになっていた。


 なんだか、胸がすごくドキドキするけど……

 なんだろう、これ?


「大丈夫ですか?」

「あ……う、うん! 大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」

「いいえ、どういたしまして。ただ、急ぎの用事でもない限り、走らない方がいいですよ? ところどころ、地面が凍っていますからね」

「うん、そうだね……ごめんね」

「ふふ、私に謝らなくても」

「あ、そうだね。つい」


 なんだか無性におかしくなり、笑う。

 すると、女の子もくすくすと笑い始めた。


「……」

「どうしたんですか? 私の顔を見て」

「う、ううん、なんでもないよ」


 よくわからないけど……

 笑う女の子から目が離せなかった。

 なんだろう?


「ところで……あなたは見たことのない顔ですが、どちらから?」

「今日、この街に引っ越してきたんだ。お父さんとお母さんは家にいて、僕は街の探検をしようかな、って」

「そうだったんですね……あの、よかったら私と友達になってくれませんか?」

「うん、もちろん!」


 笑顔を交わして、女の子と握手をする。


「僕は、フェイト! フェイト・スティアートだよ」

「私は、ソフィア・アスカルトです。よろしくお願いします」

「う、うん! よろしくね」


 ……これが、僕とソフィアの出会い。

 一生忘れることのできない、とても大事な思い出の一つだ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 もしも、カナデとソフィアとユスティーナの母親が3人揃ったら・・。 カナデ母「うちのカナデちゃんもレインくんとすっかり仲良くていいコンビなのよ」 ソフィア母…
[気になる点] 自覚が無いだけで、フェイトは完全に ソフィアに一目惚れですね (笑) 一方ソフィアはこれから想いを 深めてゆくのでしょうか? 可愛過ぎて、友達が少なそう ・・・ フェイトに対する…
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