144話 あの日の出会い
午後も街をのんびりと見て回った。
久しぶりの故郷なので、ソフィアはとても楽しそうにしていた。
僕も楽しい。
リーフランドを訪れたのは初めてだ。
色々なものを見て……
ソフィアに案内をしてもらって……
大事な人の故郷をしっかりと見ることができて、とても楽しい。
そうしていると、時間はあっという間に過ぎて、日が傾いてきた。
空が赤く染まり、太陽が水平線の向こうに隠れようとする。
その名残で街が照らされて、宝石のように輝く。
この瞬間はとても綺麗だ。
「……綺麗ですね」
「……うん」
僕とソフィアは、高台にある公園からリーフランドを一望していた。
夕焼けに照らされる街を二人で眺める。
「フェイト」
「うん」
「ありがとうございます」
「えっと……?」
どうして、お礼を言われているのだろう?
よくわからなくて首を傾げてしまう。
そんな僕を見て、ソフィアがくすくすと小さく笑う。
「今のフェイト、小動物みたいでかわいいです」
「そ、そうかな?」
「はい、とてもかわいいですよ。飼って、ずっと一緒にいたいくらいです」
「うーん」
うれしいような、うれしくないような。
一応、男なので……
かわいいというよりは、かっこいいと言われたい。
「ところで、今のありがとうはどういう意味なの?」
「いつも一緒にいてくれて、ありがとうございます」
ソフィアが笑う。
ふわりとした柔らかい笑みで、それは、まるで天使のようだった。
「私が大変な時、助けてくれてありがとうございます。いつも欲しい言葉をくれて、ありがとうございます。たくさんの笑顔と優しい思い出をくれて、ありがとうございます」
「僕は、そんなに大したことはしていないんだけど……」
なんだか照れくさくなり、視線を逸らしてしまう。
そんな僕の手をソフィアが掴む。
自然と視線が引き戻された。
彼女は……やっぱりというか、とても優しい顔をしていた。
「そんなことはありません。フェイトがいなかったら、今の私はいないと思っています。フェイトがいたから、フェイトと出会えたから、こうして元気に笑うことができるんです」
「そう、かな?」
「そうですよ」
そう言われても、あまり自覚はない。
いや、訂正。
ほとんど自覚はない。
僕がソフィアの力になっていると、彼女は言うのだけど……
むしろ、僕の方が助けられてばかりだ。
それなのに、どうして?
ソフィアの認識は違うのかな?
だとしたら、どんな景色を見ているのか。
どういう思い出を見ているのか。
それを知りたいと思った。
「ソフィアは……」
「フェイト、覚えていますか?」
「え?」
「あの日のこと、覚えていますか?」
どこか期待が込められた瞳で、ソフィアが僕を見る。
あの日は……
「うん。もちろん、覚えているよ。あの日、僕とソフィアは初めて出会ったんだよね」
そう……あれは、十年以上も前のこと。
そして、別の街でのこと。
とある冬の日に、僕とソフィアは出会った。
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